ペダル配置は「BAC」!? 約百年前のベントレー「オールド・マザー・ガン」で公道を走るための作法を徹底的にお教えします
エンジンを始動する前の厳粛な儀式とは
クルマをガレージから出し、エンジンをかけるためにまず最初に行うのは燃料タンクに空気を送り込むことである。丸い木製のノブがついた手動のポンプが室内の中央に備え付けられ、これを前後に動かすことで燃料タンク内の空気圧が高まる。レース仕様のモデルにしか装備されないものだが、高速で走行するとタンク内のガソリンが減り、思った量のガソリンを送り込めずパワーを失う。そのためスタート時に限らず走行中も何度もこのポンプで空気を送ることとなる。電磁ポンプに改良されたこの時代のクルマで思ったようなパワーが出ないのはこの圧力の調整がうまくいかないことが多くの原因であるという。 空気圧がおおよそメーターで「1」を示すレベルまで達すると、ハンドルの前にある3スイッチをパチパチと入れる。この3つのスイッチのうち2つはバッテリーを通電させるためのもので、もう1つはオルタネーターからバッテリーに電力を送り込むためのものである。スイッチを入れて最後に黒いイグニッションを押すといかにも大きなシリンダーが動いていることを思わせるように、車体をブルブルと震わせながら野太い「ブオン」という音とともにエンジンが始動する。 直列4気筒4398ccのエンジンは一度かかるとその後は安定して800rpm程度でアイドリングを続ける。 コッパ・ディ東京のスタート地点である汐留までは日本橋と銀座の中央通りを抜けるルートである。朝6時半という時間だが、まるで映画の世界から飛び出してきたかのようにクラシックカーが銀座を疾走する姿は道行く人には不思議な光景に映っていたであろう。 クラッチを切り、センターに位置するアクセルペダルで回転を合わせ、ドライバーズシートの右側に位置するシフトレバーを1速にいれると、モーターの音のような唸りとともに車体が前に押し出される。アイドリング音も走行時もレーシングカーを思わせる爆音とは異なり、実際のところエンジン音というよりもギアが噛み合って発する音のほうが大きいように感じた。4速に入るとそれも皆無で、まるで現代車のコースティングモードに入っているように静かである。
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