ブリヂストン、ロボット「Morph(モーフ)」で“無になる時間”をサービス化した「Morph inn Shimokitazawa」12月20日まで期間限定オープン
ブリヂストンの社内ベンチャーである「ソフトロボティクス ベンチャーズ」とクリエイター集団「konel(コネル)」は、5月に表参道、8月に虎ノ門ヒルズで展開して大きな反響を得た“無目的室”「Morph inn(モーフ・イン)」のサービス内容を拡充したポップアップストア「“無目的室”Morph inn Shimokitazawa」を11月28日~12月20日の期間限定オープンする。利用にはHOT PEPPER BeautyのWebサイト内に用意されている申し込みフォームからの事前予約が必要で、料金は1500円~7980円。 【画像】Morph inn Shimokitazawaの施設外観 Morph inn Shimokitazawaではこれまで行なってきたMorph innでの取り組みを発展させ、より幅広い来場者に“無になる時間”を体感してもらうことをテーマに設定。NTT東日本、エステー、第一三共ヘルスケア、京王電鉄などの企業とコラボレーションすることで「無前」「無中」「無後」という新たなコンセプトを開発。「無の価値」を体験できる場となっている。 “無目的室”Morph inn Shimokitazawa概要 所在地:東京都世田谷区北沢2丁目6-4 ミカン下北 E街区 2階 営業時間:11時~21時(最終入店は20時30分) 定休日:火曜日・水曜日 Morph innのメインコンテンツとなる「Morph」は、ソフトロボティクス ベンチャーズとkonelが共同開発した“柔らかいロボット”。大小の2種類が用意され、それぞれブリヂストン製のゴム人工筋肉であるラバーアクチュエーターを採用。エア圧の制御で収縮することで、しなやかで自在に動ける構造となっている。 体験時間がこれまでの5分から10分に倍増したMorph体験では、大型のMorphに横たわり、小さなMorphを毛布のように抱きかかえることによって、Morphが収録・再生する自然界のモーションを体感。やわらかいロボットに自らをゆだね、ゆだねられる時間を過ごすなかで、日ごろは無意識に制御してしまう感情に向き合ったり、目的から解放される感覚を味わえるという。 実際に筆者も数分間Morphを体験させてもらったが、撮影などで事前に作動シーンを見ていたときは小さなMorphの動きが目立っていたものの、実際には背中やお尻の下で大型Morphも頻繁に動いており、大型Morphが細かくピクピクと脈動していると、小さなMorphがわしづかみのようにギュッと大きく動くようなこともあった。さらに動作は一定ではなく不規則で、環境音などが織り交ぜられたようなBGMが響き、照明が絞られた薄暗い空間で大小のMorphに身を委ねていると、意識が分散してどこにも留まることなく漂っているような、不思議な時間を過ごすことになった。 ■ 栄養ドリンクや「茶香」で無になる時間の価値を最大化 新たな取り組みであるMorph inn Shimokitazawaでは、Morphに身を委ねて無になる時間の価値をより豊かにするため、利用時間を「無前」「無中」「無後」の3段階に分け、各段階に合ったメニューをコラボレーションする協賛企業が提供して体験できる。 なお、ポップアップストアの限られた開店期間で多彩な取り組みの効果を検証するため、一部のメニューは実施期間が異なるケースもあるため、興味がある人は提供期間をしっかりと確認していただきたい。 「無前」 無と向き合う前の心身を落ち着ける時間となる「無前」では、VIEが配信する音楽アプリ「VIE Tunes」で再生される「ニューロミュージック」と、第一三共ヘルスケアが提供する2種類の栄養ドリンクを味わうことができる。 VIEが提唱するニューロミュージックは「脳波のある帯域を増強・減衰するためにデザインされた音楽」で、聞くことによって脳波に影響することも科学的に実証。聞く人の精神や体に影響を与え、集中したり、リラックスする効果を発揮するよう作曲されている。 Morph inn Shimokitazawaでは、無を体験する前に脳のシータ波を増幅するよう作曲されたニューロミュージックを聴くことで瞑想状態のようなリラックス効果を心身に与え、「無になる手前の状態」に近づけていくという。 また、第一三共ヘルスケアの取り組みでは、無を体験する前に2本の栄養ドリンクを続けて飲んでおくことで、「無を深める」効果と「無から冴えへ誘う」効果を狙う。1本は一般的に睡眠の質を高める効果を持つと言われるグリシンやテアニン、GABAなどを成分に含めるドリンクだが、2本目は一般的に眠気覚ましとして飲まれているカフェインやアルギニンなどを成分に持つドリンク。 一見すると相反する効果のように感じるが、グリシンが体内に入ってすぐに効果を発揮し始めることに対し、カフェインは飲んでから20分~30分ほどの時間差で覚醒効果が出てくる点に着目。Morphを体験する前に2本の栄養ドリンクを飲むことで、より深く無を味わいつつ、すっきりと「無後」を迎えることをコンセプトとしている。 実際に2本を飲んでMorphを体験した人がどんな感想を持つのかといった聞き取りなどで検証を行ない、前向きな反響が多ければ、これまでにない「短時間の仮眠前に飲んでおく栄養ドリンク」としての製品化につなげていきたいと担当者は語った。 「無中」 「無中」では基本となるMorph体験に加え、12月9日~16日の期間に「ZZZN NATURE(ズズズンネイチャー)」と題するバーチャル森林浴を実施。 NTT東日本などが運営する仮想コミュニティ「ZAKONE(ザコネ)」のプロジェクトとしてエステーと共同提供するZZZN NATUREでは、入眠や起床に効果を持つトドマツの枝葉から抽出した天然のエッセンシャルアロマオイルの香りを散布して、Morph周辺の3方向にある壁面に北海道・釧路のトドマツ森林の映像を投影。ZAKONEの活動から生み出された「SLEEP SOUND LABEL ZZZN」によるBGMも流し、Morphを体験しながらトドマツ森林にいるようなバーチャル森林浴で無の体験を深めていく。 「無後」 Morph体験後の「無後」では、オープニング記念として「Ochill」「日本草木研究所」とのスペシャルコラボレーションを実施。 Ochillが提供する「茶香」では、シーシャ(水たばこ)の原理を応用した“吸うお茶”という新しい日本茶の楽しみ方を体験できる。 茶香はシーシャでたばこの葉を入れるシーシャボウルに日本茶を入れ、炭火による加熱で発生した煙を事前に煎れたお茶で濾過して煙を吸い込み、日本茶が持つ香りを飲んだり焚いたりする以外で味わう新しい体験。白い煙には日本茶の香りとカフェインが含まれており、煙を吸い込む動作が深呼吸につながって、カフェインによる覚醒とリラックス効果を同時に体験できるという。なお、茶香は11月28日~30日の3日間限定で実施される。 日本草木研究所から提供される「草木炭酸フォレストソーダ」は、間伐材として処理されるヒノキや杉、モミ、アカマツ、黒文字の5種類を主な原材料として使用。芳香成分のフィトンチッドを持つ炭酸飲料を飲むことで、無の体験で癒やされた気分を継続させながらすっきりとした覚醒に導いていく。草木炭酸フォレストソーダの提供期間は調整中となっている。 また、会場となったミカン下北を運営する京王電鉄の井出康仁氏は、ミカン下北では社会実験などさまざまな取り組みを応援しており、Morph innの新しい取り組みとして「日常生活に“無”の体験を採り入れた前後でどのような変化が起きるのか実験したい」と提案を受けたことからコラボレーションに参加したと説明。 また、Morph inn Shimokitazawaでのサービスに加え、ミカン下北としてD街区2階にある「Fairground Bar&Wine shop」で「無後」の時間を締めくくる特別なカクテルを用意し、ワーキングスペース「SYCL by KEIO」の割引利用チケットを提供していることを紹介した。 ■ 2025年4月に開催される「ミラノサローネ国際家具見本市」に出展予定 スタート前日に実施された報道関係者向け内覧会では、ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズのCEOである音山哲一氏と創業メンバーで主幹を務める山口真広氏からMorph inn Shimokitazawaの説明や協業の狙いなどについて解説された。 音山CEOはソフトロボティクス ベンチャーズの活動について、すでにソフトロボットハンド「TETOTE(てとて)」を使い、BtoB向けの製造・物流市場で製造工場や倉庫の自動化といった分野で事業化を進めてきたことを紹介。 そして新たにオープンするMorph inn Shimokitazawaで有料サービスを開始することを受け、ウェルビーイング市場にも参入することになったと語り、今後は製造・物流市場、ウェルビーイング市場での活動をベースとしつつ、他社の新規事業立ち上げを伴走支援するコンサルティング事業にも取り組み、この3本柱を事業ポートフォリオに定めて事業を進めていくと語った。 また、今後の展開として2025年4月にイタリア・ミラノで開催される世界最大級の家具見本市「ミラノサローネ国際家具見本市」への出展を計画していると発表。海外進出も視野に入れていることを明らかにした。 山口主管はMorph innで行なってきたこれまでの活動について振り返り、まず5月に表参道で実施した初回の会場で、体験した人の多くから「忙しい毎日のなかに無目的な時間を持つことがとても大事だと気付かされた」という感想を耳にしたことが、これから自分たちがソフトロボットで新しい市場を作っていくための大切なコンセプトになるのではないかと考えるようになり、今回の有料サービス展開の原動力になったと紹介。 また、8月に虎ノ門ヒルズにあるシェアオフィスで展開した2回目では、このMorph inn Shimokitazawaでコラボレーションすることになった多くの企業の担当者と知り合って協議するきっかけになったと語っている。 今後に向けては、Morph innを「瞑想」「サウナ」に続く無になる時間として育てて市場を作り上げていきたいとコメント。さらにMorph inn Shimokitazawaでは京王電鉄にも参加してもらったことで、無をきっかけとして新しい消費が生み出され、新しい行動や習慣ができていくことにつなげて街全体を盛り上げていきたいと意気込みを口にした。 さらにコネル 代表取締役 CEOの出村光世氏は、開発を進めるためスタッフ一同で日常的にMorphを利用しており、この製品が持つ魅力については自身を深めている一方、何も生み出すことのない「無という時間」に対してどのように商品価値や経済価値を感じてもらえるようにするかという点が現時点での命題になっていると解説。 この問題解消に向け、Morphの体験時間を「無前」「無中」「無後」の3シーンに分けて各コラボレーション企業から提供されるサービスを実施。どんな体験をすると来場者の生活を豊かにできるのか実験して模索していきたいと述べた。
Car Watch,佐久間 秀