頭から流血の元日本代表監督「一歩間違えたら死ぬ」 サッカー界と隣合わせの命の危険【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】メキシコ代表アギーレ監督にビール缶が直撃した
メキシコ代表は11月15日に行われたCONCACAFネーションズリーグ準々決勝の第1戦でホンジュラスと対戦し、0-2で敗れた。試合後、メキシコを率いる元日本代表監督のハビエル・アギーレ氏に観客から投げられた物が直撃し、頭から流血した。元日本代表DF栗原勇蔵氏は「文化で片付けてはいけない問題ではないか」と話した。(取材・構成=FOOTBAL ZONE編集部) 【実際の場面】「ファンを挑発」「反発した」 元日本代表監督の頭へ缶が直撃し流血するシーン ◇ ◇ ◇ メキシコ代表はホンジュラスに0-2で敗戦。試合終了後ピッチから引き上げるアギーレ監督に向かって、メインスタンド側からペットボトルなどのゴミが投げられ、その中の一つであるビール缶が同監督の頭部に直撃。アギーレ監督が頭から血を流す姿がカメラに捉えられていた。北米メディア「TUDN」によれば、アギーレ監督は頭部から流血し、傷をふさぐために4針縫う処置を受けたという。 栗原氏はこの光景に「これ一歩間違えたら死にますからね。こんな感じで飛んできたら、ちょっとまずい。当たったのに何にも動じてないところがまたすごいけど、ホンジュラスもメキシコもめちゃくちゃ治安が悪い。ただ治安が悪いからといって、ちゃんとできなかったら、もう出場資格はないのかなと。言うのは簡単かもしれないですが。アギーレは監督ですが、選手に試合中こうなる可能性もあったわけで、大事故になってもおかしくない。もっとも、この時点で大事故といえば大事故ですが」と話す。 ホンジュラスメディアによると、アギーレ監督がファンを挑発したとされるが、栗原氏は「中南米の血筋とヨーロッパの人とはちょっと違う。アギーレも余計なことを言って煽っただけで、命の危険も感じたと思う」と話す。 また、アギーレ監督はビール缶を当てられたことに不満を述べていないともされる。栗原氏は「そもそもメキシコもホンジュラスもとんでもない治安ですが、そんな世界で生きているから、もう変に煽るよりも、これで自分が余計なこと言わなければって感じで収めたのかもしれない。本当はそうではいけないんですが。ちょっと危険すぎて、その辺は全然成長していない」と呆れる。 中南米のこうした光景について、栗原氏は「文化は違うだろうけど、文化で片付けてはいけない問題ではないかと思う。彼らは生活の一部だと言うけど、生活の一部だったら何をしてもいいのかという話だし、逆に言えば生活の一部だからこそ、安全に楽しくしなくてはいけないと思う」と話す。 そして、このような熱量がサッカーの成長につながるという意見も見られることについて、「メキシコとかホンジュラスが、じゃあそうやって熱いから成長しているかというと、日本ほど成長していないと思う。一昔前のブラジルなど、そういう熱いサポーターがいるからみんな成長するって言うけど、もうそういう時代ではないとは思う。そういうことをやっている国は、どんどん置いていかれてしまうのではないか」という意見を話していた。 [プロフィール] 栗原勇蔵(くりはら・ゆうぞう)/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。
FOOTBALL ZONE編集部