【米国政治に翻弄されるTikTok】バイデン大統領は規制法案にサインもトランプ氏は反対を表明、親会社・字節跳動の株主構成と成長の経緯を読み解く
中国系動画投稿アプリTikTok(ティックトック)の米国におけるサービスが2025年1月19日以降、停止される可能性が高まっている。 【写真】字節跳動(バイトダンス)の創業者・張一鳴氏
バイデン大統領は2024年4月、親会社である中国系企業の字節跳動(バイトダンス)に対して、米国TikTokを9か月以内に売却しなければ米国内でのサービスを禁止する法案(TikTok規制法)にサインした。 字節跳動側はすぐさま、この法案が米国憲法の定める言論の自由の保護に反するとして米国政府を訴えたのだが、連邦控訴裁判所は12月6日、それを退けた。字節跳動側はさらに、緊急差し止めを申し立てたが13日、それも棄却された。 字節跳動はSNSを通して「TikTokの利用禁止が停止されない限り2025年1月19日以降、1億7000万人余りの米国人および世界中の人の声が封じられることになる」と表明しており、連邦最高裁判所に上訴することが確実な状況だ。16日には新法の一時差し止めを要請している。 米国では今になって、国家が中国系企業のSNSを禁止するかどうかを問題にしているが、中国では一貫してSNSに限らず海外のインターネット関連ビジネス全般に対して強い規制を敷いている。日本人でも中国に出張したり、実際に住んでみたりすればわかるが、ヤフーメールは使えるが、ヤフー検索、グーグル検索は使えず、Facebook、Messenger、LINEも使えない。ちなみに、日経新聞電子版も閲覧できない。 もっとも、一部のVPNを使えば何とかその一部は利用はできる。ただ、そのVPNへの管理が年々厳しくなっており、現在では、事前に何の準備もせずに中国に入ってしまえば、日本語、英語などの必要な情報を自在に入手することは極めて難しい状況に陥ってしまう。 中国政府は国家の安全と社会の安定を維持するために、国内外にかかわらず、インターネット情報の自由な拡散を制限している。強い性悪説に立ち、インターネット関連業者が収集する大量のユーザー情報、すなわち、個人情報、交友関係、活動記録などについて、当局は厳格な監督管理を行っている。それでも、国内の情報の受発信について、ほとんどの情報は日本と変わらず自由なのだが、組織的な政治活動や、政府への抗議など、当局が社会を不安定化させる情報と判断する範囲となると、一転して全面禁止となる。 海外のSNSについてはこれまで、新疆ウイグル自治区における人権侵害、台湾の独立に向けた動き、香港の民主化運動などについて、中国政府に批判的な内容の情報を中国国内で自由に拡散させた過去があり、当局はその点に、強い警戒感を持っている。その結果、中国国内では現在、海外の主要SNSについてほぼ閲覧禁止といった状況となっている。