会計不正の番人かオオカミ少年か 空売り投資グラウカス日本進出どう見るか
上場企業の会計不正を調査して、空売りを行う米国のグラウカス・リサーチ・グループ(以下、グラウカス)が日本企業を対象とすることにしたという報道が行われています。7月をめどに開始するという、グラウカスの日本進出をどう捉えたらいいのでしょうか。
空売りとは
最初にグラウカスが行っている「空売り」について確認しておきたいと思います。空売りとは、証券会社などから有価証券を借りて、それを売ることであり、有価証券の価格が下がる局面で行われます。例えば、株価が1000円のときに株式を借りて、それを売り、株価が700円になったときに株式を買い戻して、それを返せば、300円の利益を得ることができます。 以前、ある企業が増資に関する適時開示を行う前から、その企業の株価が急激に下落し、問題となったことがありました。後になって、増資に関する情報が証券会社から機関投資家へ漏れて、機関投資家がその情報に基づき空売りを行っていたことが明らかになりました。 増資が行われると、株式の希薄化が生じるため、投資家に敬遠されて、多くの場合、株価が下がります。機関投資家は、増資により株価が下がることを予想して、空売りを行ったのです。その結果、増資によりただでさえ株価が下がる傾向にあるのに、それに拍車がかかることになったのです。
グラウカスのやり方
企業が会計不正を行った場合も、通常、その企業の株価は下がります。したがって、ある企業の会計不正が発覚した場合、その企業の株式の空売りを行えば、利益を得られるかもしれません。それを実行している投資家は現にいるかと思います。 それに対して、グラウカスのやり方は少し異なるようです。グラウカスは、ある企業の会計不正が発覚した後、その企業の株式の空売りを行うのではなく、自らある企業の会計不正を発見し、その企業の株式の空売りを行った後、その会計不正を公表し、その企業の株価を下げることによって利益を得ようとするのです。