会計不正の番人かオオカミ少年か 空売り投資グラウカス日本進出どう見るか
公表情報から明らかに分かる会計不正のみ
グラウカスの取材に応じる企業はないはずですので、グラウカスは企業の公表情報(有価証券報告書など)により会計不正の調査を行うのだと思われます。したがって、グラウカスが発見する会計不正は、公表情報から明らかに分かる会計不正に限られることになります。 確かに、会計の知識があれば、財務諸表から様々な会計不正の可能性を把握することはできます。しかし、財務諸表の元となる情報を入手できない限り、多くの会計不正を立証することは困難です。さすがにグラウカスが証拠のない情報を公表することはないはずです。公表した情報が誤っていた場合には、風説の流布とされてしまう危険性があります。
意図的な会計不正の発見は不可能?
グラウカスが発見しようとしている会計不正とは、財務諸表上の数値が正しくないことですが、それには「意図的なもの」と「意図的でないもの」があります。会計監査の世界では、「意図的なもの」を「不正」、「意図的でないもの」を「誤謬(ごびゅう)」と分けて呼んでいます。 意図的でない「誤謬」よりも、意図的な「不正」の方が、発見することが困難です。「不正」を行った企業は当然、それがバレないように証拠を隠そうとするからです。監査法人が見逃してしまうことがあるのも、「不正」の方です。 ましてグラウカスは公表情報のみで調査を行うのですから、「不正」を発見するのは極めて困難なはずです。「不正」の可能性は把握できたとしても、その証拠は入手できないでしょう。グラウカスが発見できるのは「誤謬」に限られると思われます。
グラウカスが発見できる会計不正とは
グラウカスが発見できる会計不正は、公表情報から明らかに分かるものに限られ、しかも「誤謬」に限られるため、投資家の投資判断に影響を与えないような、重要性の低い「誤謬」になるかと思われます。重要性の高い「誤謬」は、監査法人に指摘されて、修正されているはずですが、重要性の低い「誤謬」ならば、財務諸表上に修正されずに残っている可能性があります。 勘違いされることがあるのですが、監査法人は財務諸表が100%正しいことを保証しているわけではなく、投資判断に役に立つ程度に正しいことを保証しているに過ぎません。監査法人が適正意見を表明している財務諸表であっても、重要性の低い「誤謬」は残っている可能性があるのです。例えば、100億円の売上高がある企業の財務諸表に10万円の「誤謬」があったとしても、投資判断への影響はないはずです。