非正規採用、モンペに校内いじめ…適応障害発症した夫を支えた教員が「裏切り」に気づいた理由
学校の正規雇用が10倍以上の倍率だったことも
今回の依頼者・奈美さんは、夕方に電話をかけてきてくださいました。会話の後ろからチャイムの音が聞こえたので、学校の先生だと確信。19時にカウンセリングルームに来た奈美さんは、年齢よりもグッと老け込んでおり、疲れ切っていました。 「夫が今年から仕事を辞めてしまい、今、私の収入で食べているんです。娘もまだ中学生だし、お金がいくらあっても足りない。夫の実家は貧困で、私の実家だってそんなに豊かじゃない」などと、お金がないことについて、不満を話していました。 改めて奈美さんについて伺うと、都内の公立学校の先生だと言います。まず、私のところに連絡をくれた理由を伺いました。 「夫が浮気をしています。私がこんなに夫のために献身しているのに裏切ったんです」と号泣してしまいました。 奈美さんと夫の出会いは大学時代。ともに教育学部で学校の先生を目指す仲間だったと言います。奈美さんは学校の先生輩出も多い国立大学、夫は私立大学の教育学部です。 「私たちのとき、正採用の教員になるのは非常に狭き門でした。倍率も10倍以上あり、地元の県では採用されにくいので、採用人数が多い東京の採用を狙いました」 文部科学省が発表している「公立学校教員採用選考試験の実施状況」によると、教員の正規採用の倍率は、ここ数年は3~4倍ですが、90年代後半は小学校も中学校も10倍を超える年が続き、2000年には小学校で12.5倍、中学校で17.9倍。奈美さんたちの年も10倍を超える、狭き門の時代でした。
妻は正規採用、夫は非常勤
奈美さんと夫は、厳しい就職戦線を助け合いながら進むうちに、恋愛関係に発展。 「私は新卒でなんとかもぐりこめたのですが、夫は産休代理の非正規雇用の教員から経験を積む道を選びます。これがとにかく待遇が悪い。産休補助はいつ入るかわからないし、期間が終わればすぐに切られる。“よそ者”扱いされるので、同僚からも生徒からもナメられます。当時、夫のことが好きだったし、女性の教員の婚活が厳しいことを知っていたので、同棲を提案しました」 当時の夫は、週5日出勤で手取り月収は約15万円。さらに正規採用の先生が避ける僻地の学校に赴任させられることもあり、2年間職員住宅住まいになったこともあったとか。奈美さんの給料も高いとは言えませんが、夫と助け合って生きることにしたそうです。 「そんな努力が実り、夫は27歳の時に、正式に採用されます。僻地勤務時代の校長が、夫を推薦してくれたのです」