JRA初の女性調教師、前川厩舎が来年3月開業 1年通して矢作厩舎でノウハウ学ぶ
2025年3月、JRAに新たな歴史が刻まれる。昨年12月、調教師試験に合格し、JRA初の女性調教師となった前川恭子技術調教師(47)が、来年3月に厩舎開業を迎える。 今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」では、藤本真育(マイク)記者が開業を目前に控える心境を取材。幼少期に出会った乗馬をきっかけに志した競馬の世界で、いよいよ前川師が、前川厩舎が動き出す。 女性調教師のパイオニアへ。あと2カ月余りで、JRAの歴史に新たなページが加わる。近年、女性騎手こそ増えているが、女性調教師となるとJRA史上では前川師が初めて。ただ、厩舎開業を目前に控えても師は自然体を崩さない。 「受かった時点で責任感はずっとあります。開業が近づけば、さらに緊張感は出てくるかもしれませんが、今はコツコツやるべき準備をこなしています」 幼少期の出会いが始まりだった。市役所で働いていた母の同僚の勧めで、11歳の頃に乗馬クラブへ通うようになった。馬に乗っている時間がとにかく楽しく、乗馬に行くのが楽しみのひとつになった。「ずっと馬に関わっていたい」。自然と馬に携わる仕事を探すようになっていた。 大学時代には馬術部の部費を払うために美浦の乗馬苑でアルバイト。競馬の世界を知った。すぐに北海道の牧場へ行き、それから約20年間、調教助手を務めてきた。そして昨年、学生時代から目指していた調教師の試験に合格を果たした。 技術調教師としてのこの1年間は、名門・矢作厩舎に所属した。当初は短期間だと思っていた研修だが、矢作師と夫人の「今年は年間を通して海外遠征があるから、ずっといていいよ」という温かい言葉で、1年にわたってトップステーブルのノウハウを学ぶことができた。世界各国のセリも視察し、積極的に北海道へ足を運び、牧場とのコミュニケーションも大切にしてきた。 「持ち乗りの調教助手から調教師になったので、知らないことがたくさんありました。出馬投票などの事務作業から、勝つためのレース選択、調教の仕方など大変勉強になりました。この経験を生かしたいです」 開業は来年3月初旬の予定。「しっかりとケアをすることで、馬は前向きになれると信じています。馬も人も楽しい厩舎を作っていきたいです」。幸せを呼ぶコマドリの卵の色に由来するティファニーブルーの厩舎服に袖を通し、まもなく始まる2025年、前川師の新たな挑戦がスタートする。 (ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)