主要政党の外交・安全保障政策に関する主な公約

日本が戦後最も複雑で厳しい安全保障環境に直面する中、今回の衆院選で各党が訴える外交・安保政策はより重要性を増している。領空侵犯など挑発行動を繰り返す中国や核・ミサイル開発を強行する北朝鮮など軍事的脅威に対する抑止力・対処力をいかに高めていくのか。現実的で実効性のある政策が求められる。 政府は令和4年に国家安全保障戦略など安保3文書を策定し、反撃能力（敵基地攻撃能力）の保有や防衛費増額を決めた。 自民党は安保3文書に基づき防衛力の抜本的強化を進める方針だ。その一環として、人材確保に向けた自衛官の処遇改善を掲げる。自衛官の採用を巡っては、人口減少の影響などで5年度の採用人数が募集に対して51％で過去最低だった。石破茂首相（党総裁）は衆院選の応援演説で「どんなに立派な戦車、戦闘機、護衛艦を持っても、自衛官がいなければ日本を守れない」と訴える。 ただ、自衛官の処遇改善は、立憲民主、日本維新の会、国民民主の野党各党も公約に盛り込んでいる。首相は政権発足後、関係閣僚会議を立ち上げ、年内には具体策をまとめる方針だが、いかに効果的な施策を打ち出せるかが課題となる。 一方、首相が自民党総裁選で訴えた「アジア版NATO（北大西洋条約機構）」の創設は、党内で議論されていないため公約には入れなかった。 公明党は、紛争を未然に防止するため「アジアにおける多国間の安全保障対話の仕組みづくり」を訴える。米国の核兵器を自国内に配備して共同運用する核共有には「断固反対」し、核兵器禁止条約批准の環境整備を進めると強調する。 立民は、5年度から9年度までの5年間で約43兆円の防衛費を確保する政府方針について「急増した防衛予算を精査する」と慎重な姿勢を打ち出し、財源確保のための増税は行わない考えを示す。平成27年に成立した安全保障関連法に関しても「違憲部分を廃止するなど必要な措置を講じる」とした。同時に、野田佳彦代表は同法の一定期間の継続を示唆する。 維新は、外交では台湾との関係強化を強調。日台の自由貿易協定（FTA）締結や台湾に現職自衛官を駐在させることなどを訴える。米国が核を含む戦力で日本防衛に関与する「拡大抑止」について核共有も含めた議論を開始し、日米同盟の抑止力を高めるとする。