【NBA】首脳陣とジミー・バトラーの決裂が決定的になったヒート、バム・アデバヨ「失望している」
「ただひたすら集中して戦い続けることが重要なんだ」
ヒートとジミー・バトラーは決裂した。昨年オフに契約延長交渉が行われなかったことで生じた亀裂は、静かに少しずつ広がっていった。契約延長交渉が行われないまま2月のトレードデッドラインを迎えれば、ヒートは見返りなくエースを失うリスクがあり、移籍の噂は過熱した。『ESPN』がヒートはバトラーをトレードするつもりで、行き先はマーベリックス、ロケッツ、ウォリアーズ、サンズになると報じたのに対し、ヒートの『ボス』であるパット・ライリー球団社長は「我々はジミー・バトラーをトレードには出さない」との声明を発表した。 しかし、続いて起きたのは声明とは全く逆の動きだった。体調不良で欠場していたバトラーが復帰すると、ほとんどシュートを打たない3番手、4番手の選手に『格落ち』しており、それが2試合続いた時点でバトラーは「バスケをプレーする喜びを取り戻したい」という言葉で不満を表し、これに対してヒートは「チームに有害な言動があった」としてバトラーに7試合の出場停止処分を科した。 同時に、ヒートはバトラーのトレード交渉を進めることを正式に認めた。これでバトラーは1カ月以内にトレードされる可能性が高く、そうでなくてもシーズン終了後に退団するだろう。バトラーの行き先が気になる状況下、エースが出場停止で不在となったジャズ戦で、ヒートは再建チームを相手にホームで36点差という屈辱的な大敗を味わった。 「チームと選手が対立する状況に失望している」とバム・アデバヨは言う。「でも、NBAでは良い時も悪い時もある。そんな波がある中でも集中し、高いレベルでプレーして勝たなければいけない。多くの雑音があるけど、みんなには集中を求めたい。ただひたすら集中して戦い続けることが重要なんだ」 バトラーのトレードが決まれば、それに見合った補強があるが、バトラーのトレードをまとめるのは一筋縄ではいかない。本来であればフロントと衝突するのが表沙汰にならないうちに交渉をまとめるべきだったが、今回ばかりはパット・ライリーが下手を打ったと見るべきだろう。 バトラー不在のヒートでチームを引っ張るべきはアデバヨでありタイラー・ヒーローだが、今シーズンのアデバヨは不調が続いている。ヒーローはキャリア最高のパフォーマンスを見せているものの、バトラー不在でNo.1オプションとなった場合は、相手のマークもそれだけ厳しくなり、そこでチームを勝たせるだけの働きができるかが問われる。 バトラーの不在により、ベンチを含めたローテーションは変えざるを得ない。バトラーの離脱はヒート加入以来パッとしないテリー・ロジアーの奮起に繋がるかもしれないし、伸び盛りのニコラ・ヨビッチのブレイクのきっかけになるかもしれない。指揮官エリック・スポールストラは、ドラフト下位やドラフト外の選手を実戦で使いながら鍛え上げることに長けており、思わぬ新戦力が出てくる可能性もある。それでも『勝ちながら』となれば簡単ではないし、バトラー問題でチーム内部が混乱する今、難易度はさらに上がる。 過去5シーズンのヒートにおいてバトラーはエースであるだけでなく、チームの顔であり精神的支柱だった。アデバヨが言う「失望」はチームの誰もが持っているもので、それを払拭するのは簡単ではない。ヒートはここまで17勝16敗と勝ち越しているが、ここで踏ん張れなければ今シーズンの上位争いから脱落することになりかねない。