新型コロナ対策の希望~ウイルスを死滅させる装置を発明
それから12年後の2009年、道脇はネジロウを創業。最初に作ったのが「L/Rネジ」だった。 この画期的な発明品はさまざまな賞を獲得、道脇は世界に誇るべきニッポンの100人という雑誌記事にも選ばれた。しかし、道脇のネジは世の中に広まらない。 「どこからもオファーがなかった。メーカーは完全否定でした」(道脇)。自動車メーカーやゼネコンに持ち込んでも「実績がない」という理由で、軒並み不採用となった。原発事故を受けて道脇が作った放射線をブロックできる水の壁も、採用されることはなかった。 それでも道脇は諦めない。佐藤さんと交わした約束を胸にひたすら発明し続けたのだ。 「とにかく世の中に還元する。めげずにこりずに、ほふく前進をしてでも歩み続ける。半歩でも1ミリでも1マイクロメートルでも進もう、みたいな」(道脇)
報われない日々が続いた道脇だが、3年前に潮目が変わる。世界中に約10万社の取引先をもつ世界最大の鉄鋼商社「メタルワン」からタッグを組もうと声をかけられた。 そして、メタルワンの取引先の課題解決にあたる会社「ネジモ」を2021年、共同出資で設立した。 「稀な能力をお持ちの人と愚直に取り組む会社だから、タッグを組めないかと」(「メタルワン」久富成祥さん) 簡単につながる鉄筋を一緒に開発した「東京鉄鋼」も実は「メタルワン」の取引先。不遇の続いた天才発明家は、その発想力を思う存分使える場所に立ったのだ。 「『どこでもドア』を手に入れたのに近いかもしれません。どの分野にもアクセスできる。世界中に課題解決で技術を普及できたらいいなと思います」(道脇)
驚きの発明品が続々誕生~インフラ工事に革命?
道脇は今、1万キロあるうちの4割が老朽化していると言われる日本の大動脈・高速道路の課題解決にも挑んでいる。現状の高速道路は、アスファルトの下のコンクリートがひび割れ、中の鉄筋は錆びついている。 「第1回の東京オリンピックの頃に建設されたものが多く、さらに老朽化が進むともう間に合わない」(道脇) 改修工事を急ピッチで行っているが、思うように進んでいないのが現状だ。改修は劣化したコンクリート板を剥がし、そこへ新しい物を入れていくため、時間がかかる。クレーンで吊り上げ、所定の場所へミリ単位の正確さで設置しなければならないのだ。さらに間の部分は、後からコンクリートで繋げなければならない。