新型コロナ対策の希望~ウイルスを死滅させる装置を発明
緩まないネジから始まった~発想力で難題を続々と解決
東京・文京区のネジロウ本社。オフィスの壁という壁はホワイトボードで、訳のわからない数式や図形がビッシリ。これが発明のアイデアの素だ。 道脇の名を世に知らしめた発明品が緩まないネジ、「L/Rネジ」だ。それまでの常識だった螺旋構造を捨て、新たなネジ山を考案。右回りと左回りのナットを同じネジで使えるようにした。 こうして締めれば、振動で上のナットが緩もうとしても下のナットは締まろうとする。二つが逆方向の動きになるので、絶対に緩まないのだ。ネジの誕生から2000年。不可能と言われた問題を解決した道脇の発明だ。 「“可能辞典”に載っていないことはみんな不可能だと思っている。でも『緩まないネジはできる』と考えたら『どうすればいいか』という思考に変わる。たいていのことはできてしまいます」(道脇) 道脇は企業とタッグを組み、社会課題を解決する事業にも力を注いでいる。
栃木・小山市の東京鉄鋼本社工場。大手鉄鋼会社と共同開発しているのは建設業界の未来につながる、建設現場に効率化を生む部品だ。 「建設現場に人手が足らず現場を回せなくなっている。省人化技術をどんどん開発して世に出していきます」(道脇) 建設業界をも直撃する2025年問題。現場では90万人の職人が不足すると言われている。そうした中で道脇が取り組んだのが鉄筋の改革。これまでは熱で溶かして接合してきたが、1カ所を繋げるのに5分もかかっていた。
道脇が考案したのは新しい形の鉄筋。表と裏に突起がついており、さらに鉄筋同士を繋ぎ合わせる継ぎ手も作った。内側には特殊な溝が途中で角度を変えて刻まれている。これを鉄筋に差し込み、90度回転させる。反対側も同じ要領。これだけで固定されるのだ。これまでの方法より強度も増すと言う。 道脇はどんな構造を考えたのか。継ぎ手の中には、特殊な溝が上下互い違いに刻まれている。そこに鉄筋を入れて90度回すと、突起が溝に噛み合う。構造的にはこれだけの話なのだが、なぜか強く固定されるのだ。 共同開発した東京鉄鋼も実は全貌を理解しているわけではなく、むしろ狐につままれたようだと言う。 「うちの開発メンバーや技術者で仕組みが分かっている人はいない。みんな家に持ち帰って一生懸命勉強したけど、誰も分からない。100年先の技術です」(経営企画部長・吉原栄孝さん) ただしこの技術があれば、今まで5分かかっていた作業が30秒で終わる。東京鉄鋼は今後、全ての鉄筋を道脇式に変える方針だ。 「難しい課題や問題であるほど、誰も挑まないし挑めない。挑んでも解決できないことは往々にしてあるけど、自分がやればできるかな、と」(道脇)