2024夏の高校野球・スカウトの評価を上げた選手たち。旋風を起こした学校のあの選手や超高身長投手など
■荒れる大会で評価を上げた投手 このように微妙な評価のドラフト候補が目立った一方で、株を上げた好素材もいる。関東第一(東東京)は、エース右腕の坂井遼(さかい・はる)がリリーフで躍動。東海大相模との準々決勝では、自己最速の151キロをマークした。ストレートの軌道から鋭く曲がるスライダーも光り、甲子園のスコアボードにゼロを並べ続けた。 身長190㎝の大型右腕・有馬惠叶(ありま・けいと/聖カタリナ・愛媛)は初戦敗退に終わったものの、資質の高さをアピール。昨秋時点では実力不足でベンチ入りメンバーにもなれなかったが、投球フォームとトレーニングを見直して開花。甲子園では自己最速を3キロも更新する146キロを投じた。 試合後には「育成選手でもいいからプロに行きたい」と語ったように、強いプロ志望を持っている。 最速152キロ右腕の関浩一郎(せき・こういちろう/青森山田)、最速149キロ左腕の田崎颯士(たさき・りゅうと/興南・沖縄)は大学進学予定ということが惜しまれるほど、高い潜在能力を感じさせた。 特に関は今春以降のフィジカル強化に伴い、グレードアップに成功。甲子園でも安定感のある投球で、チームの勝利に貢献した。ツーブロックのヘアスタイルと凜々しいルックスでスター性も抜群だった。 ■旋風を起こした大社にもプロ注目が 野手では藤原佑(大社)のスピードが目を引いた。身長168㎝と小柄ながら、50m走5秒8の快足。報徳学園戦では力強いスイングで2安打をマーク。 暑さで両足の太腿が痙攣した状態でも盗塁を成功させるなど、甲子園の4試合で4盗塁を決めた。島根大会では6試合で12盗塁を記録している。プロ志望届を提出する意向を示しており、スピードスターの動向が注目される。 運動能力でいえば中村奈一輝(なかむら・ないき/宮崎商)も負けてはいない。50m走6秒0の俊足、遠投115mの強肩を誇る遊撃手だ。今夏は腰痛を抱えており、甲子園では足がつるハプニングにも見舞われ初戦敗退。身長183㎝、体重71㎏とまだ線は細いが、高い将来性を秘めている。 今大会は将来有望な2年生も目立った。特に来年のドラフト指名が有力視されるのは、森陽樹(もり・はるき/大阪桐蔭)、福田拓翔(ふくだ・たくと/東海大相模)、石垣元気(いしがき・げんき/健大高崎)の3右腕。 森はキャッチボールを見ただけで「モノが違う」と思わせる逸材。最速151キロの剛腕には夢が詰まっている。今夏は小松大谷(石川)戦で自身の守備のミスもあって敗れたが、その経験でひと回り大きく成長するはずだ。 福田は最速150キロの数字以上に体感スピードがある好球質が魅力。「藤川球児さん(元阪神ほか)のように、わかっていても打てないストレートを投げたい」と意気込む。今夏はリリーフとして甲子園ベスト8を経験したが、今秋以降は長いイニングで先発適性をアピールしたい。 石垣は最速154キロと現段階でも高校トップクラスの球速が魅力の速球派。空振りを奪える球質になってくれば、ドラフト上位候補に浮上するのは間違いないだろう。 高校球児はいつ化けるかわからない。今夏の甲子園で消化不良だった選手も将来の活躍度は未知数。今後の動向から目が離せない。 取材・文/菊地高弘 写真/時事通信社