人気漫画『1122』実写ドラマ化!夫婦でクリエイターな監督&脚本家の仕事の距離感とは?
彼女は「脚本家」というより「監督」だなってことがわかったんです(力哉さん)
──『1122 いいふうふ』での共同作業を経て、今後、お二人でまたタッグを組む可能性は? 力哉さん それはちょっとわからないです(笑)。というか、やりたくないわけじゃなくて、一緒に仕事をしてみて、やっぱり彼女は「脚本家」というより「監督」だなってことがわかったんです。明確なビジョンも意見もありますし。 彼女が2012年に監督した『聴こえてる、ふりをしただけ』は、ベルリン国際映画祭で賞を受賞しています。当時、彼女が映画祭に行っている間、俺は家で自主映画の脚本を一生懸命書いていて。「俺は今、何をやってるんだろう」ってちょっと涙出ましたもん。なんだか悔しくて。嫉妬していました。 ──同じ土俵に立つクリエイター同士の葛藤もありそうですね。 力哉さん でも、扱っているジャンルが違ったことは救いですね。同じジャンルで差異を見せつけられていたら、俺、たぶんやめていたかもしれない。 ただ、妻に対しては「この業界に戻ってきてほしい」「彼女が監督した作品を観たい」という思いがつねにあったので、ようやく自分が仕事で食べられるようになって、彼女がこの世界に戻ってきてくれたことが本当にうれしいです。 かおりさん 子育ても看護師の仕事も楽しかったんですけど、もともと映画の世界に行きたかったので、彼が作品をつくることで「まだ映画の世界とつながっている」という安心感がありました。そのことは救いでしたね。
彼は「いつも楽しく過ごしてほしい、幸せでいてほしい」と思う相手(かおりさん)
──いいバランスですね。改めて、お互いの存在を言葉にしていただけますか。 力哉さん 愛情はもちろんありますけど、尊敬できる人。他の人にはない視点だったり、俺に対するいい意味での興味のなさだったり、そういうことも含めて15年も一緒にいられるのかなと思います。 かおりさん 「いつも楽しく過ごしてほしい、幸せでいてほしい」と思う相手。自分が産んだ子どもはかわいいし、絶対に幸せになってほしいと願っていますが、彼に対しても同じように思います。それはやっぱり、家族だからなのかな。 力哉さん そうか…。やばいですね。ちょっと泣きそうです。仕事が全然なかった時期も、「映画やめたら?」とは一度も言われたことがないんですよ。そこはありがたかったですね。去年までしばらく撮影が続いていたので、今年は長期の仕事をしないで家でゆっくり過ごそうと決めているんです。でも、自分で休むと決めたはずなのに、いざ家に数日間いると、めっちゃ不安で。 かおりさん 休めない人になっちゃってるよね。 力哉さん 無趣味だからね(笑)。 映画監督 今泉力哉 1981年生まれ、福島県出身。2010 年『たまの映画』で商業監督デビュー。2013 年『こっぴどい猫』でトランシルヴァニア国際映画祭最優秀監督賞受賞。主な作品に『サッドティー』(2014)、『愛がなんだ』(2019)、『his』(2020)、『あの頃。』(2021)、『街の上で』(2021)、『窓辺にて』(2022)、『ちひろさん』(2023)など。恋愛映画の名手として知られる。現在、最新映画『からかい上手の高木さん』が公開中。 監督・脚本家 今泉かおり 1981年生まれ、大分県出身。地元の看護大学卒業後、大阪で看護師として働くが、映画監督の夢を追い求め2007年に上京。ENBUゼミナールで映画制作を学ぶ。卒業制作の短編映画『ゆめの楽園、嘘のくに』が2008年度京都国際学生映画祭で準グランプリを受賞。初長編監督作『聴こえてる、ふりをしただけ』は、2012年ベルリン国際映画祭「ジェネレーションKプラス」部門で子ども審査員特別賞を受賞した。ドラマ『1122』では脚本を担当。 『1122 いいふうふ』 2024年6月14日(金)よりPrime Videoにて世界独占配信! 脚本:今泉かおり 監督:今泉力哉 原作/渡辺ペコ「1122」(講談社「モーニング・ツー」所載) https://1122-drama.com/ 撮影/天日恵美子 取材・文/松山梢 企画・構成/国分美由紀