前年比30%増! 「自転車盗難事件」が急増している2つの理由 しかも、鍵をかけたほうが戻ってこない逆転現実
無施錠自転車の被害
自転車盗難が急増している――。 警察庁が発表した最新の犯罪統計資料によると、2023年の自転車盗(じてんしゃとう。自転車の窃盗を行う犯罪)の認知件数は16万4180件であった。これは前年比で3万5297件、率にして27.4%の大幅な増加である。1日あたりの発生件数に換算すると約450件。10分ごとに1件のペースで自転車が盗まれている計算だ。 【画像】えっ…! これが自転車違反の「検挙件数」です(計5枚) 平成期後半から令和初期にかけて、自転車盗は一貫して減少傾向にあった。ところがコロナ禍の影響で減少していた自転車盗難が、2022年に入り再び増加に転じた。2022年には12万8883件と、前年比で2万件以上も増加した。 この自転車盗難のなかで特に問題なのが、 「無施錠の自転車」 の被害だ。警察庁の資料では2022年までのデータを分析しているので、それをもとに解説しよう(最新版は『令和4年の刑法犯に関する統計資料』)。 2022年に発生した12万8883件のうち、実に8万2113件が無施錠の自転車であり、全体の63.8%を占めている。一方、施錠していた自転車の被害は4万6770件で、36.2%にとどまる。 つまり、自転車盗難の約3分の2は無施錠が原因で発生しているのだ。この傾向は近年に始まったことではない。2013(平成25)年から2022年までの10年間を見ても、無施錠自転車の被害割合は常に60%前後で推移している。無施錠の自転車が狙われやすいという構図は、長年変わっていないのだ。
盗難目的の違い
では施錠していれば安心かというと、そうとはいい切れない。 2022年のデータによれば、施錠していた自転車の被害回復率は45.4%、無施錠自転車は52.4%となっている。無施錠自転車の方が、回復率は高いのだ。これは一見矛盾しているように思える。施錠していない自転車の方が見つかりやすいとは、どういうことだろうか。 その理由はこう考えられる。無施錠の自転車は、面倒な錠を解除する必要がないため、気軽に盗んでそのまま乗り捨てられることが多い。一方、わざわざ施錠を解除して盗む自転車は、 「転売目的」 であることが多い。盗品が闇市場に流れてしまうと、発見が難しくなるのだ。特に高額な自転車は、盗難後にバラバラに分解されてパーツごとに転売されるケースもあり、発見が一層困難になる。ゆえに、最低限の施錠は必須であり、さらに施錠方法や駐輪場所の選択にも工夫が求められる。 自転車盗の増加は、ほかの街頭犯罪の状況とは対照的だ。例えばひったくりの認知件数は前年比23.0%減の551件、車上狙いは2万4934件で前年より増加したものの、まだ7.1%増にとどまる。自転車盗難の増加率は、ほかの街頭犯罪を大きく上回っているのだ。そこには、どのような背景があるのか。