生理の血で血糖値やコロナの検査までできるように!? デンマークの研究で明らかに
次世代のアプローチ
経血のセルフ検査キットに着目している企業はQvinだけじゃない。米ジョージア工科大学で生化学を専攻するイーサン・ダミアーニ氏には、がん生物学とバイオテクノロジーの講義の中で抱いた疑問をもとに、大学の仲間たちと独自のプロトタイプを作り始めた。「あの日聴いた乳がんと子宮頸がんの非侵襲的な検査方法に関するプレゼンテーションで『非侵襲的な検査では患者の腕から血液を採取します』と言っていたのが気になったんです。その方法は決して非侵襲的でも簡単でもないような気がしました」 こころの医学:侵襲的な検査は私たちの心理状態にどのような影響を与えるのだろう? 最近は、治療計画を立てる際に患者の経験を考慮する“トラウマインフォームドケア”というアプローチを取り入れる医療プロバイダが増えている(トラウマには、性的虐待、近親者間暴力、慢性疾患、痛みを伴う治療など、さまざまな形態がある)。 トラウマインフォームドケアを行う医療プロバイダの診察では、通常の診察と異なり、トラウマ的な経験や現在進行形の問題の有無を聞かれる可能性が高い。体に触れる必要があるときは事前に患者の許可を求め、治療の前と最中に手順を説明し、患者が望めば、その理由にかかわらず治療を一時中断したり早めに終えたりするのもトラウマインフォームドケアを行う医療プロバイダの特徴。 このようなプロバイダのデータベースはまだないけれど、“自分の居住地+トラウマインフォームドケア”で検索したり、かかりつけ医にトラウマインフォームドケアの医師を紹介してもらったりすることは可能。治療というのは自分の気分を悪くするためでなく良くするために受けるべきものなので、ここはひとつ積極的に動いてほしい。 そのプレゼンテーションのあとでダミアーニ氏はプレゼンターに「経血を検査に使おうとした人がいるかどうか」を尋ねたそう。でも、冷たくあしらわれたので、女友達のリア・プレムに相談を持ち掛けた。その後2人は(のちに共同設立者となるギリシュ・ハリとネトラ・ガンジーと共に)4年時のキャップストーン(現実の課題解決)プロジェクトで新製品の開発に取り組んだ。彼らがFADpad(FADはFiltered Adhesive Diagnosticsの略で、直訳するとフィルター付き粘着性診断用ナプキン)と名付けたこの製品は、普通のナプキンに細長い紙切れをくっ付けて、経血が十分に採取できたら剥がすというもの。 「私たちは、ユーザーが生理用品を買い替えなくても使える技術を開発したいと思いました」とプレム氏は語る。 FADpadの開発プロセスはQvinほど進んでおらず、プレムのチームはFADpadの開発にフルタイムで取り組むための資金調達を目指している(チームの中には学業と並行して頑張っている人も)。それでもユーザーからのフィードバックはポジティブで、FADpadは最近行われた学内発明コンテストの学部生部門で見事1位に輝いた。