脳の神経細胞のダメージ軽減 歩くと増加アセチルコリンの重要性/医療ジャーナリスト・安達純子
「新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防」<22> 1日15~30分程度歩くと、脳のマイネルト基底核という部分から伸びた神経の先端から、アセチルコリンという神経伝達物質がシャワーのように分泌されるという。すると、大脳や記憶をつかさどる海馬の血管が拡張して血流が一気に増え、神経細胞が守られる。この研究を行う東京都健康長寿医療センター研究所自律神経機能研究室の堀田晴美研究部長は、次のように話す。 「アセチルコリンは、脳で重要な働きを担っています。大脳皮質(知覚や思考、学習など高次機能を担う脳)や海馬のアセチルコリンが増えると、大脳皮質や海馬の血流が増えることに加え、脳を守る神経成長因子を増やすことも、私たちの研究で明らかにしました。また、アセチルコリンの作用が高まると、脳の神経細胞のダメージを軽減することもできます」 アセチルコリンがしっかり働いていると、一時的に血流が悪くなっても、脳の神経細胞死が起きにくいという。それほどアセチルコリンは脳にとっても、そして、認知症予防にとっても重要といえる。 「認知症のひとつアルツハイマー病は、アセチルコリンを作る神経細胞が少なくなります。アセチルコリン神経の大元ともいうべきマイネルト基底核に障害が起こっている可能性があるのです。歩行などによってマイネルト基底核を刺激すると、アセチルコリンを作る細胞が老化によって萎縮するのを防ぐ可能性があります」と堀田部長は話す。