会社が定年後の「再雇用」に応じてくれません。再雇用を「認めない」のは問題ないのでしょうか?
年金制度改革により、厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられ、2025年4月には報酬比例年金が65歳まで引き上げられる見込みです。 仮に60歳で定年退職した場合、年金受給できる65歳までの5年間が無収入になってしまいます。そのため、定年退職後も再雇用で仕事を続けようと考えている方もいらっしゃるでしょう。 しかし中には「再雇用後の労働条件が会社とうまくまとまらない」と、悩みを抱えている方もいるでしょう。 そこで今回は、再雇用の際に、会社と交渉がうまくまとまらなかった場合は違法となるのかについて、実際の判例を基に解説します。
再雇用後の交渉がまとまらなくても法律違反とは一概にいえない
再雇用後の労働条件について、会社と意見がまとまらない場合に法律違反になるかどうかは、一概にはいえません。日本では、年金を受けとる年齢まで働き続けられる環境整備を目的とした「高年齢者雇用安定法」があります。この法律では、以下の2点が義務づけられています。 ・60歳未満の定年を禁止する ・定年を65歳未満に定めている会社は、65歳まで雇用を確保する これにより、60歳の定年制を採用している企業が、65歳までの再雇用を拒否することは原則として違法です。 しかし、会社の就業規則で定める解雇事由または退職事由に該当する場合には、再雇用を拒否できるとされています。そのため、上記に該当する場合には、企業が継続雇用することを拒否しても違法にならないとされているのです。 また高年齢者雇用安定法は、雇用の継続を求める法律です。定年前と同じ待遇で再雇用することを義務づける制度ではないため、双方が就業条件に合意しない場合には、再雇用がなされない可能性もあることを認識しておきましょう。
再雇用に関する過去の判例
定年後の再雇用が法律で定められているとはいえ、企業と従業員の間にさまざまなトラブルが生じるおそれがあります。この章では、再雇用に関する過去の判例をご紹介します。 ◆九州惣菜事件 ここでは、九州惣菜事件の判例を見てみましょう。定年時、フルタイムで就労していて月額33万5500円の賃金だった従業員に、再雇用の労働条件として週3日または週4日の勤務、実働6時間で時給900円(パートタイム)と企業が提示しました。 しかし従業員は、再雇用後に大幅に賃金が減少するとして労働条件を拒否し、不法行為として損害賠償を求めたのです。以下の理由から、慰謝料100万円が認められました。 ・定年退職前の労働条件との継続性・連続性を一定程度確保するものとは到底いえない ・従業員の担当業務の量が定年前よりも大幅に減ったとまではいえない ・正当化する合理的な理由がない 再雇用に関する問題は、不法行為が認められるケースと棄却となるケース、どちらもあり得るため、一概に判断できないところが難点です。必ずしも法に反しているとは言い難いため、会社と従業員の話し合いが難航することは珍しくありません。