稲垣来泉「感情を乗せる難しさと楽しさ」映画『366日』陽葵役で挑んだ“最大の理解者”の役作り:インタビュー
俳優の稲垣来泉(いながき・くるみ)が、2025年1月10日に公開される赤楚衛二主演映画『366日』に出演。上白石萌歌演じるヒロイン・玉城美海の娘、陽葵(ひまり)を演じる。HYの名曲「366日」からインスパイアされた本作。HYの「366日」は、叶わぬ恋を歌った失恋ソングとして2008年に発表され、今なお世代を超えて愛され続けている。映画『366日』では、その楽曲をモチーフにした、映画オリジナルの物語で、沖縄と東京2つの都市を舞台に、20年の時を超えた、切なすぎる純愛ラブストーリーに仕上がっている。本作でキーパーソンとなる陽葵を演じる稲垣は、映画『そして、バトンは渡された』(21)、『ブルー きみは大丈夫』(24/主人公・吹替)、『【推しの子】-The Final Act-』(24)などに出演し、その演技力の高さで注目を集めている。インタビューでは、撮影で意識していたことや印象的だったシーン、また11月からPrime Videoで配信中、12月20日から映画が公開中の『【推しの子】-The Final Act-』の撮影について、話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】 【写真】稲垣来泉撮り下ろしカット ■感情をぶつけるシーンがすごく難しかった ――稲垣さん演じる陽葵は、映画『366日』のなかで重要な役ですが、お話聞いた時はどのような気持ちでしたか。 HYさんの「366日」は両親と一緒に私もよく聴いていたので、あの時よく聴いていた曲が物語となり、映画になるんだとワクワクしていました。また、昔から親しまれている名曲をモチーフにした映画に出演させていただけるということ嬉しかったです。 ――当時「366日」の歌詞は理解できていました? 初めて聴いたときはまだ幼かったので理解できていなかったと思います。でも映画『366日』に携わるにあたり、改めて聴いてみると歌詞の意味もわかるようになっていました。今では歌えるほど体に染み込んでいる曲の一つです。 ――ちなみに今はどんな音楽をよく聴いていますか? 最近よく聴いている曲はMrs. GREEN APPLEさんの「点描の唄」、あいみょんさんの「ラッキーカラー」です。下校時に友達と一緒に歌いながら帰ったりしています。 ――歌といえば、映画『漁港の肉子ちゃん』の主題歌で、吉田拓郎さんの「イメージの詩」をカバーされていましたね。当時、どんな気持ちで歌われていたのでしょうか。歌詞もとても難しい内容ですよね? 例えば、歌詞に登場する<古い船>はおそらく“人生”のことだよね、というふうに父が教えてくれました。また、レコーディングのときにGReeeeN(現・GRe4N BOYZ)のHIDEさんがいらっしゃって、フレーズ毎に私がイメージしやすいような例えをあげてくださいました。「体育の授業が終わって疲れているときに『次は給食だ嬉しい!』 みたいな気持ちで歌ってみて」といった感じで、とてもわかりやすかったです。 ――本当にわかりやすいですね。さて、稲垣さんが演じる陽葵はどんな子だと思いましたか。 元気で活発な子だと思いました。私もよく「元気だね」と言われることが多くて、陽葵と自分は似ているところが多いなと思います。 ――すごく演じやすかったのでは? はい。でも陽葵と私では置かれている状況が全然違うので、陽葵の感情を表現するのはとても難しくて、しっかり自分が陽葵にならないと、表現はできないと思いました。 ――陽葵の涙にグッときました。 ありがとうございます。そのシーンは特に感情が大きく動く場面ですが、観てくださる方にその想いをしっかり伝えるのは難しいと思っていました。前後のシーンでも感情が動くポイントがあったので、陽葵の気持ちになって感情の揺れを大きくしていくことで、だんだん涙が出てきました。また、中島さん演じる琉晴に電話越しに感情をぶつけるシーンも大変でした。監督は、琉晴を見つけて感情が昂る陽葵の様子をカメラに収めたいとおっしゃっていて、一気に感情を昂らせる表現もとても難しかったです。 ――さて、今回共演シーンが多かった上白石萌歌さんと中島裕翔さん、現場でのお二人の印象はいかがでした? 上白石萌歌さんとは、朝ドラ『ちむどんどん』(NHK)でご一緒させていただいたことがありました。沖縄が舞台となったドラマで、現場で少しだけお会いしていたので、再び『366日』でお会いしたときに「沖縄に縁があるね」と言ってくださってとても嬉しかったです。また、中島さんは優しくて面白くて、温かい方だなと思いました。 ――中島さんとはどんなお話を? 『366日』を撮影している時、映画『ブルー きみは大丈夫』という、私が吹替を担当させていただいた作品が公開されていた時期だったので、その作品でご一緒したKis-My-Ft2の宮田俊哉さんのお話をしました。宮田さんが吹替の時もお元気だったことや、宮田さんと私は花粉症で、アフレコではティッシュが必須だったことなど、いろいろお話しさせていただきました。 ――沖縄で楽しかったことはありました? 撮影の前日に沖縄入りしたので、マネージャーさんと一緒にアメリカンビレッジ(沖縄県北谷町美浜にあるリゾート地区)に行ってブリトーを食べたり、お土産を見たり沖縄を満喫できました。また、マネージャーさんにいろんな場所で写真を撮ってもらい、楽しかったです! ■実写化されるなら天童寺さりなを絶対に演じたかった ――11月に配信されたドラマ『【推しの子】』に、天童寺さりな役で出演しています。『【推しの子】』は大好きな作品なんですよね? はい! 『【推しの子】』の単行本の第 1 巻が発売された時から読んでいる作品です。大好きな漫画がドラマ&映画実写化されて、それに私が関われるというのは本当に嬉しかったです。オーディションだったのですが、オーディションに参加できるだけでも嬉しくて。 ――すでにイメージができているので、演じやすかったのでは? はい。漫画からの情報をヒントにして、さりなを演じました。私は好きな漫画は何度でも読めてしまうタイプなので『【推しの子】』も何回も読んでいました。その中でも特にさりなが好きで、実写化されるならこの役を絶対に演じたいと思っていました。 ――稲垣さんは、天童寺さりなをどんな人物だと分析されていますか? 天真爛漫で愛くるしくて、見ている人の胸がキュンってなってしまうようなキャラクターだと思いました。明るい子なのですが、葛藤もありいろんな感情が混じっている女の子でもあります。そういう部分を自分が表現できたらと思いながら演じていました。 ――共演者の方々とはお話しされました? 雨宮吾郎先生を演じた成田凌さんとお話しました。成田さんとは 3 回目の共演なのですが、成田さんは 「3 回目の共演ってなかなかすごいよね」と言ってくださって。共演した作品の思い出を話したりして楽しかったです! ――場面カット拝見したのですが、病室やパジャマなどすごくかわいいですよね。 病室が“推し部屋”になっていて、グッズの一つひとつ美術スタッフさんの手作業で作られているので、どれも家に持って帰りたいくらい可愛かったです。また、さりながかぶっているニット帽も原作に忠実に衣裳部さんが作ってくださったもので、作品への愛を強く感じました。原作と見比べて観るとまた楽しさが倍増すると思います。 ――稲垣さんが思う『【推しの子】』の魅力とは? 小さい子から大人の方、原作を知っている方はもちろん、まだ読んでいない方も誰にとっても楽しめる作品だと思います。特にライブシーンのキラキラ感や、キャラの目がキラキラしている部分が気に入っています。また、実写化にあたり伏線をしっかり回収できるようにリメイクされていて、それぞれ登場人物の心情の揺れ具合や変化が繊細に描かれているので、そういうところも魅力の一つだと思います。 ――『366日』、『【推しの子】』の撮影を経て、発見や学びはありましたか。 『366日』も『【推しの子】』も、キャラクターの複雑な感情や葛藤がある役だったので、表現の仕方についてたくさんの学びがありました。 ――いま、お芝居のどんなところにやりがいを感じていますか。 台本の中だけにあるものを自分の肉体を通して表現することです。自分とはまた違う役の感情で動いたり、セリフを言ったり、アドリブを入れたりすることが楽しいです。役の人物になっているからこそ、受け取る感情や発見できるものがあるので、そういうものを見つけられた時にやりがいを感じます。自分が演じる役の最大の理解者でありたいと思っています。 ――今後やってみたい、挑戦してみたい役はありますか。 私はサーフィンやスノーボードなど、体を動かすことが大好きなので、体を激しく動かすような役柄や作品に出演してみたいです。他にも動物が大好きなので、動物が関わる作品にも出られたら嬉しいです。 (おわり)