センバツ高校野球 浦学、延長で惜敗(その1) 9年ぶりの決勝果たせず /埼玉
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)は大会第10日の30日、浦和学院は準決勝で近江(滋賀)と対戦。延長十一回に2―5でサヨナラ負けを喫し、優勝した2013年以来9年ぶりの決勝進出は果たせなかった。「よくやった」「惜しかった」。スタンドからは選手たちに温かい拍手が送られた。【平本絢子】 先に試合を動かしたのは浦和学院だった。0―0で迎えた四回表、先頭の伊丹、金田、鍋倉、高山が4者連続で長短打。好調の主軸が活躍して2点を先行する。 「相手の応援もすごいが、こっちも負けていない」。青く染まった近江の3塁側アルプススタンドに目を向け、吹奏楽部の応援リーダー、白須裕梨さん(16)は力を込めた。吹奏楽部員は人数制限の上限にあたる50人が陣取る。白須さんは指揮を担当すると得点することが多く、部内で「ヒットガール」と呼ばれているという。鍋倉の先制点も指揮で後押しし「自分の指揮棒で流れを引き寄せます」。 センバツ初先発の右腕・浅田は四回まで、走者を背負いながらも打たせて取る粘投。浅田を追って4月から浦和学院でプレーする弟の健輔さん(15)は「すごく迫力があった。自分もこの舞台でやりたいと思った」と目を輝かせた。五回から投げた芳野、五回2死から登板の金田と3人の継投で、延長十回まで連打を許さなかった。 左翼手・三宅の好守も光った。甲子園初スタメンの守備に立った一回裏2死二塁、左翼線への大きな当たりに飛びついて近江の先制を阻止。四回裏に2―1とされた直後の1死二塁、抜ければ同点となる飛球をダイビングキャッチした。和歌山から駆けつけた父の正和さん(44)は「良かった。後でナイスファインプレーと声を掛けたい」と頰を緩めた。 全員が全力を尽くし、3点本塁打を打たれた延長十一回裏。生徒会、ソングリーダー部、吹奏楽部で構成する応援団「ファイヤーレッズ」や、OB、保護者らで赤く染まったスタンドからは惜しみない拍手が続いた。「ここまで来られたのも、監督をはじめ全員の努力があったから。皆が力を出し切れた」。マネジャーの宮治希実さん(17)は瞳を潤ませた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇先制の好機逃さず 浦和学院・鍋倉和弘一塁手(3年) この日も先制の好機を逃がさなかった。四回表、伊丹、金田の連打で無死二、三塁。変化球を振り抜くと一塁強襲の内野安打に。伊丹を還して一塁からベンチの森大監督とグーサインを交わし、笑みを浮かべた。 2021年秋の関東大会から4番を任される。冬の間は芯で捉える力を養おうと木製バットを振り込んだが、練習試合では不振に悩んだ。「打てないと落ち込んでしまい、次の打席のことを考えられない弱さがあった」と、三浦貴コーチにメンタル面でも指導を受けた。 甲子園入りしてからも毎日のようにアドバイスを求め、準決勝前夜も連絡を取り合ったという。「力が入りすぎたら打てない。力を抜いていけ」。その言葉を信じて結果につなげた。 センバツでは4試合中3試合で初打点を挙げ、準々決勝の勝ち越し3点本塁打を含め計7打点。4強入りの立役者ともいえる活躍にも「ここで一本打てばもっと点が入ったという場面もあった。次につなぐ打撃も大切にしたい」と貪欲に、更なる飛躍を誓った。【平本絢子】