甲子園ボーイからラクロス選手に?!群馬有数の実力校の指揮官が他競技から教えてもらったこと
今夏の群馬大会は2校の公立校がベスト8まで勝ち残った。1つは前橋商、そしてもう1つが今回紹介したい前橋東だ。 【一覧】21世紀枠都道府県推薦校
他競技での4年間で広がった世界
現在は2学年で17人。秋は2回戦で高崎経済大付に4対5で敗戦。新チームは結果を残すことが出来なかったが、夏の戦いぶりは爪痕を残したといっていい。当時から主力選手で、現在はエース兼主将である高草木瑠海は、「初戦から雰囲気がよく、守ってくれる安心感がありましたけど、直前の練習試合では不安があったので、不思議です」と快進撃を振り返る。 ただ、「実打ノックという守備メインの試合形式の練習で、考えながらバッティングするなど、日ごろから考えて野球をやっていたので、試合では自然と状況に応じたプレーが出来た」という要因を挙げた。 そういった考える習慣、経験を積む練習内容に、「中学の時にあまり考えずに野球をしていたので、最初は追いつけなかった」と高草木主将は振り返るとともに、「出場経験を積んだり、意見を出し合ったりしたから、理解が出来た」という。 高草木主将が話したような考える習慣、経験値というのは、全て指揮官・小暮直哉監督の仕掛けである。 前橋高での現役時代、そして前橋工での監督時代に甲子園出場。選手として、そして指導者として夢舞台を経験した。が、面白いのは早稲田大での4年間。ここでは野球から離れ、ラクロスに取り組み、日本代表にもなったという経験を積んだ。 「興味本位で体験会に行ったときに、『こんなに面白いスポーツが野球以外にもあるのか』という出会いで、即決しました」ということで、ラクロスに進んだそうだが、この経験が大きな土台となっているという。 「大学では、高校野球のような絶対的な指導者がいなかった。ヘッドコーチはOBでしたので、戦術とかは自分たちで主体的にやらないといけない。けど、それが楽しかったんですよね。高校野球は監督の指示で動くけど、選手同士で意見を出し合って考えた作戦なので、試合で成功した時は苦労して考えた分、喜びも大きいんです。 それから考えてプレーする面白さを覚えました。だから、夏の大会では監督がいなくなるようなチームを目標に、思考自走というスローガンのもとで日々活動するようにしています」 この思考自走というスローガン、形作られたのは2020年頃だったという。 「前橋東に赴任した時は、考える習慣こそ与えていたんですけど、こちらから指示を出さないと行動に移せないところが多かったんです。加えて、赴任する前は公式戦12連敗。公式戦で実力を発揮できないメンタルの弱さもあったと思うんです。だから人前で発表する機会を与えてあげて経験をさせたり、“自走”という言葉を、恩師である松本稔先生の取材記事を新聞で見かけたりしたことで、目指すチームがはっきりしたんです。 だって、試合中に指導者から逐一指示を出せるわけではない。そうすると観察力や洞察力、相手との駆け引きが必要です。そういう心理戦に野球の面白さがあるし、質の高い、強い野球に繋がると思ったんです。それを意識してからは、結果が出やすくなったと思います」