コロナ禍でも「成長業種」の兆しをいち早く発見、「銘柄発掘」のヒントは“ちょうどいい都会”にある
暴落により信用維持率が70%台まで低下していたからだ。信用維持率が30%を割り込むと「追証(追加証拠金)」の入金が必要になる。私のキャッシュ(現金)比率はいつもほぼゼロ。追証を求められても入金できる現金はない。 追証を入れられないと保有株を切られてしまうが、追証が発生するほどの暴落の底で売らされるのはたまらない。絶対に避けたい事態だ。 「信用維持率をせめて90%台に戻さなければ」 そう思い、信用取引で買ったポジションを処分していった。かのスティーブ・ジョブズも眺めながら思索にふけった石庭だというのに、私は煩悩と邪念に心を支配されていた。
だがその投資行動は結果的に大間違いだった。龍安寺で処分した平和不動産は底値から2.8倍へ、スシローはコロナ禍でのテイクアウト需要にうまく対応したことから4.3倍へと急騰していった。そのまま握っていれば、今頃、資産は10億円へと達していただろう。 なぜ慌てて処分せざるを得なかったのか、信用維持率が70%台へ低下する前に対応できなかったのか? 原因はコロナショックの「速さと深さ」だ。 2000年以降の3大ショック(ITバブル崩壊、リーマン・ショック、チャイナショック)はいずれも半年前後の時間をかけて30~50%ほど下げていった。その半年の間にはいずれもリバウンド局面があり、逃げることができていたのだ。
ところが、コロナショックでは30%下落するのに要した時間はわずか25日しかない。しかもリバウンドらしいリバウンドもない直線的な下落だ。 逃げ場のないままに下げていったために起きた「龍安寺の惨劇」だった。 東京へ戻ると、非常事態宣言が発出された。それから3年間、街角ウォッチがいかに有効だったかを思い知らされることになる。 ■コロナ禍で消えてしまった「銘柄のヒント」 コロナ禍では池袋から人が消えた。街角ウォッチといっても人がいるのは「焼肉ライク」と「銀だこ」くらいのもの。「1人焼肉」と「テイクアウト」だ。それはそれでコロナ禍での街並みの変化を象徴しているとはいえるが、投資のヒントにはなりそうもない。新たな銘柄のヒントを与えてくれていた人波は街から消えてしまった。