東京マラソンで波紋を広げたペースメーカーは本当に大問題だったのか…パリ五輪切符に41秒届かった西山雄介の無念
パリ五輪男子代表の最終選考会を兼ねた東京マラソンが3日、東京都庁―東京駅前の42.195kmコースで行われ、西山雄介(29、トヨタ自動車)が自己ベストの2時間6分31秒で日本勢トップの9位に食い込んだがMGCファイナル設定記録(2時間5分50秒)を突破できず。パリ五輪代表入りは逃した。昨秋のMGCで3位だった大迫傑(32、ナイキ)が2大会連続五輪代表に内定した。今回のレースでは転倒、そしてペースメーカーのトラブルなどが問題視されたが、西山の敗因を改めて検証してみた。 【画像】「ポロンあるかも」井岡一翔の大晦日決戦を盛り上げた4人のラウンドガール
2022年のオレゴン世界選手権代表の西山にビッグチャンスが到来した。ペースメーカーが離脱した後、33.3㎞過ぎに浦野雄平(富士通)をかわして日本人トップに浮上。34.5㎞では五輪を連覇中のエリウド・キプチョゲ(ケニア)も抜き 去り、パリ五輪に急接近したのだ。 「30㎞で一度きつくなったんですけど、自分のペースで落ち着いて走りました。そこから少しずつ動いてきて、浦野選手を抜いた後が大事だなと思っていたんです。そこからどれだけ押せるかが勝負でした」 西山は30㎞からの5㎞を15分03秒で走破。このペースを維持できれば、2時間5分50秒をクリアできる可能性は残っていた。さらに例年、向かい風になることが多いラスト4㎞も選手たちを妨げるような風はない。しかし、西山に〝ラストスパート〟を放つ体力は残っていなかった。 35㎞からの5㎞は15分31秒とペースダウン。日本歴代9位の2時間06分31秒で日本人トップに輝くも、MGCファイナルチャレンジ設定記録に41秒届かなかった。 レース後は、「オリンピックに行きたかった。その一言です」と涙がこぼれた 西山は2022年2月の別府大分で2時間07分47秒の大会新Vを飾ると、同年のオレゴン世界選手権は世界大会で日本人最高タイムの2時間08分35秒をマーク。昨年10月のMGCは46位に沈んだが、「マラソンに出場する度にアップデートしてきました。今回はこれまでで一番いい状態でスタートラインに立てたと思います。2時間05分50秒を切るだけの練習もしてきたつもりでしたし、自信はありました」と振り返る。しかし、目標タイムに及ばず、「結果的には全然足りなかった。『悔しい』の一言です」とうなだれた。 西山はなぜパリ五輪代表を獲得できなかったのか。今回のレースでは5つの〝原因〟があったと筆者は感じている。 まずは設定記録を破らなければいけないという重圧だ。日本陸連の瀬古利彦・ロードランニングコミッション・リーダーもレース後の会見で、「記録を狙うと力が入って思うように走れない。先週の大阪、今日の東京でも、オリンピックを狙う選手は力が入っていた」と話している。 今回はペースメーカーに恵まれなかった面が大きかった。 男子のペースメーカーはファーストが国内最高ペースとなるキロ2分52秒、セカンドが日本新ペースとなるキロ2分57秒で引っ張る予定だった。 東京マラソンは10㎞までが下り基調のコースで、残りはほぼフラットだ。前半で〝貯金〟を作り、終盤は粘るというレースプランがスタンダードになる。 先頭集団は中間点を世界新記録ペースの1時間00分20秒で通過。ベンソン・キプルト(ケニア)が国内最高記録(2時間02分40秒)を塗り替える2時間02分16秒(大会新&世界歴代5位)で優勝した。
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