【中学受験相談・小6直前期】受験生である子どもの精神的な幼さが気になります|VERY
でもここまで来たら、お母さんが「させてあげる」ではないですよね
オ:僕、今日これだけお話をして一つ気になったというか、気づいたというか。もしかしたらこれがヒントになるかもしれないと思っているのですが。これから2カ月、お母さん、もうちょっとゆっくり喋ったほうがいいかもしれない。 N:……はい。 オ:自分の頭を整理しながら、何を伝えたいのか、この話の結論はなんなのか。お母さん自身が意識して、ゆっくりしたペースで息子さんと話してあげる。そうするともしかしたら、息子さんも整理がしやすくなるかもしれない。お母さんの話って、情報がブワーッと入ってくるんですよ。「今この話していた、あ、今こっちなんだ」っていうふうになりがちなので、そのペースを落としてあげることで、思考がもしかしたら安定するってこともあるかもしれない。僕は塾の先生でもないし、これでうまくいったってケースを聞いたわけでもないけれど、今日お母さんと話した印象の中で、もしお母さんが今できることがあるのなら、それかもしれない。相手のペースをちゃんと見ながら、受け取りやすいペースで球を投げていくと、それが息子さんの文章にも現れてくるんじゃないかなって気がします。勘です。 N:あー。ほかにもいい学校はたくさんあって、うちの子に合わなくてもいい学校はあるし、どこもいい学校だと思うんですが、合うところに収まってくれればそれでいいです。そこに行きたいんだったら頑張ってくれよと。 オ:でも実際頑張っているわけですもんね、息子さんは。 N:たまに「それは手を抜きすぎなのでは」って思うことはあるんですけど。でも、そういういいかげんさがあるからここまでなんとかやってこられたんだと思うので、もうしょうがないですね。でも本当になんとかしてあげたいですね。本人がここまで主体的にやったことってほかにはないので、結果は出してあげたいなって思います。 オ:なるほど。なんとかしてあげたい、結果は出してあげたいって表現をよくされますよね。でもここまで来たら、お母さんが「させてあげる」ではないですよね。「なんとかしてあげたい」って言葉は、お母さんが主語になっているから。 N:はい……。 オ:そこを手放すのが最後かもしれないですよね。 N:私と子どもは違うし、正直自分の中で、私がやれることなんてないじゃんって本当に思っていて、でもそれに対して本当にそれでいいのかって。周りを見ていると、もっとコミットしているよねって。でもまあ、親離れをさせるのが目的なので、あとはお金と手続きの心配をしていればいいのかもしれない。でも、それがちょっと寂しいかもしれないですね。だんだん子どもが成長してきて。 オ:ああ、そこかもしれない。「私と子どもは違うし」って言うけれど、私がなんとかしてあげたいって表現がたくさん出てくるし、ある意味矛盾している表現がたくさん出てきたなと。でも矛盾していて当然だし、そうやって揺れ動いていくもの。その揺らぎの中にいらっしゃるんじゃないかなって思いました。 N:すみません、もう時間ですね。バラバラとごちゃついた話になってしまいました。申し訳ないです。 オ:いえいえ、お力になれたかどうか。もしこの1時間を一言でまとめるとしたらどうなりますか? N:……手放す。手放せばいいんだなって、いろんなものを。人事を尽くして天命を待つし、手放す。でもそう思えることは幸せなんだなって思いました。周りに感謝して手放していこう、と思いました。 オ:素晴らしいですね。ご自身が気づいているいろんな課題があって、それを洗いざらいお話しいただいたかと思います。 【 おおたさんからひとこと 】 記事ではだいぶカットしてしまいましたが、実際の相談では、ずーっとお母さんがしゃべっていました。あちらこちらに話題が飛んで。ついていくのがやっとでした。直前期は親も浮き足立ってしまうのはしょうがないのですが、まずは親が落ち着いてあげないと、子どもも落ち着きませんからね。まずは自分が落ち着くことを心がけてほしいと思います。 Profile おおたとしまさ 教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。リクルートから独立後、育児・教育分野で活躍。執筆・講演活動を行う。著書は『なぜ中学受験するのか?』(光文社新書)など80冊以上。 イラスト/Jody Asano コーディネート/樋口可奈子 編集/羽城麻子