【真理子の部屋／日曜新潟１１Ｒ・ＮＳＴ賞】 　競馬に携わる方々を独自の感性で描き続けてきた赤城真理子記者。それらは「予想」というカテゴリーにとどまらない、ある種の〝物語〟といっていいのかもしれない。最前線で活躍する赤城記者がお届けする人馬のストーリーをぜひご堪能ください。

◆声なき声を拾う騎手

　福永調教師って本当にすごい方だと思ったことがあります。言葉を扱う人間とは思えないほど稚拙な表現でお恥ずかしいのですが、いろいろとこねくり回した複雑な感情ではなく、単純な感動としてそう思ってしまったんです。 「（小崎）綾也は馬への理解度がとても深い。それって騎手としてすごく大事なことやなって、アイツを見ていて改めて感じてる」 　福永調教師が騎手としてデビューした時、小崎騎手はまだ１歳に満たない年齢でした。コントレイルと無敗の３冠を達成し、「騎手として、もうこれ以上の経験はない」と、全てをやりつくして引退したジョッキー人生でしたが、それでも調教師としての目線になって後輩たちを見た時になお、「いろいろ教えられるわ」と屈託なく笑うのです。 　厩舎の管理馬たちについても、調教を重ね出てきた馬体の変化を「見て、馬ってこんなに変わるんやで」と毎週撮影している馬の写真を見せながらうれしそうに記者たちに説明してくださる福永調教師ですが、大勢いる騎手の後輩たちについても、「○○は最近ほんまにうまくなったよなあ。馬の扱い、進路取りが全然違うわ」とか、「○○が乗ったあのレース、映像でもう一回見てみて。ほんまに完璧やから」とか、他厩舎の馬での騎乗までつぶさに見て話してくださる。福永調教師はありとあらゆる側面から競馬を見て、そして心から競馬を愛しておられるんだなと毎週の取材で感じています。 　そして、冒頭で話されていた小崎騎手について。小沢騎手とともに、厩舎の開業時から熱心に調教を手伝っていて、現在福永厩舎の管理馬での成績は〈１・０・３・７〉。特筆すべきは３着に持ってきた江の島Ｓのカランドゥーラや不知火特別のマンデヴィラで、ともに２桁人気の低評価だった馬を上位に食い込ませました。「アイツはね、馬のことをよく理解した上で競馬をしてくれるから、なんだかんだ持ってくるんよ」。そう言ってニコニコされていた福永調教師の言葉をお聞きし、これは小崎騎手にも直接お話をお聞きしてみたいと思ったんです。