為替介入は国を守る戦い「必要があれば制限なくやる」 通貨政策を指揮する神田財務官にインタビュー
「気候変動や途上国債務の問題などはG7だけでは解決できません。多くの国々を巻き込んで世界規模で協調した取り組みが必須なものばかりです。世界経済が直面する課題の議論に日本が積極的に貢献していくことは極めて重要で、各国からもわれわれに対する期待は高いです」 ―日本への期待が高いのはなぜですか。 「それは汗をかいているからです。一生懸命に提案をして非常に複雑な利害調整をし、成果に結び付けています。また米国、EU、中国でもない、日本の独特な立ち位置に期待をする国々は多い。ある意味中立的な日本に対しての期待があるんだと思います」 ▽経済力に比べ、かなり背伸びをした交渉 ―日本は先進国としての立場が弱まっているとの声もあります。交渉の場で感じますか。「それは本当に大変です。この数十年、新興国が急速に成長した一方で、日本経済はずっと成長しませんでした。日本の存在感というのは経済的には激減したと言ってもいい。正直言うと、経済力から見ればかなり背伸びをして、気合と努力でやっていると感じることはあります。しかしさきほど申し上げた通り、いろいろな国際フォーラムにおける日本への期待、具体的な貢献はむしろ大きくなっていると感じていますし、それは続けていかなければいけないと思います」 ―ウクライナ支援に関連して、6月にイタリアで開かれたG7サミットでロシアの凍結資産を活用した新たな支援で合意しました。日本はどのような形で支援に加わりますか。
「文字通り毎晩会議をしています。日本は融資を巡る諸条件が整えばウクライナに融資を行う考えです。交渉に差し支えがあるので具体的なことは申し上げられません。だんだんと論点は煮詰まっています」 ―神田さんは2021年から3年間、財務官を務め、7月末で退任します。最も印象に残っている仕事は何ですか。 「新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵略などこれまで経験したことがないような激動の国際情勢でした。一つの仕事に絞るのは難しい。G7議長国として議論をリードしたウクライナ支援、対ロシア制裁、国際金融機関改革。クリーンエネルギー関連製品のサプライチェーン(供給網)において、低中所得国がより大きな役割を果たせるように協力するパートナーシップの「RISE(ライズ)」の立ち上げもありました。経済安全保障はけんかばかりになってしまいがちなのですが、ウィンウィンのことをやれたのは良かったなと思っています」 「本当に困難な問題が山積しています。より良い世界を実現できるチャンスだと考えて、これからも頑張りますし、私の素晴らしい仲間たちも引き継いでくれると思っています」