昼夜の気温差300度の「月」、二酸化炭素96%で呼吸困難な「火星」…ヒトは宇宙で暮らせるか?
月の夜 マイナス200度
別の惑星への移住もかなり険しい道のりね。 まず地球から3日で到着できる月は、表面温度が昼は100度、夜はマイナス200度にもなる。大気はないから半年に1度は隕石で直径100メートルものクレーターができてとても危険。被曝量も1日で地球での4年分になる。重力も地球の6分の1程度しかないわ。米航空宇宙局(NASA)は宇宙飛行士を2024年までに月に送り、月周回基地の完成を目指すアルテミス計画を進めている。ただ、大統領がかわって延期されそうよ。 もし月面に基地をつくるなら、隕石や宇宙線から身を守る必要があるわね。17年に日本の研究チームが巨大な地下空洞を発見していて、基地の有力な候補地だと考えられているのよ。
火星の大気 二酸化炭素96%
次に移住の可能性があるのが火星ね。気温はマイナス153度にもなる極寒で、大気はあるけれど96%が二酸化炭素で呼吸ができないわ。過去には川や湖などがあったようだけど、わずかに残った地表の水は氷になってしまったみたい。重力は地球の3分の1程度よ。 地球から2億2200万キロ・メートルも離れていて到着までに半年以上かかるけれど、NASAは2021年2月に無人探査車を送り込んで生命の痕跡を探している。米宇宙企業「スペースX」は人を送る計画も進めていて、最高経営責任者のイーロン・マスク氏は26年までには火星に人を送ると宣言してロケットの打ち上げ試験を繰り返しているわ。
火星の「地球化」議論に
宇宙で地球と同様に液体の水が天体表面に安定して存在でき、地球型の生命が生存できる可能性がある領域は「ハビタブルゾーン」と呼ばれている。 京都大の山敷庸亮教授によると、太陽系外で見つかっている約4700個の惑星のうち、約260個がハビタブルゾーンにある。ただ、大きすぎるとガスや氷の塊のような惑星である可能性が高く、半径が地球の半径の1・9倍以下の惑星に絞ると約50個という。 中でも地球に最も近い惑星は「プロキシマ・ケンタウリb」だが、光速の7%に匹敵する速さの宇宙船を開発できたとしても到着まで60年以上かかる。山敷教授は「移住するならやはり、身近な月や火星になるだろう」と話す。 火星はハビタブルゾーンに近く、岩石などにとじ込められた二酸化炭素を取り出して人工的に厚い大気をつくり、地球に似た環境にする「テラフォーミング」ができるのでは、という議論がある。ただ、最新の研究では、「十分な二酸化炭素がない」との指摘も出ている。 読売新聞 石川千佳 *** 読売新聞東京本社科学部の記者たちが、「理科子先生」とともに科学の最前線に迫る『おしえて! 理科子先生(1)』(読売新聞アーカイブ選書)は、ふりがな付きで子どもにも読みやすく、受験や人生に役立つ知識が満載だ。 懸賞金1万円がかけられて話題のクビアカツヤカミキリとはどんな虫か、実はカタツムリの9割が右巻きである謎など、21のギモンに答えてくれる。 協力:新潮社 Book Bang編集部 Book Bang編集部 新潮社
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