【臨時国会召集】旧来政治は許されない(11月29日)
臨時国会は、石破茂首相による29日の所信表明演説を受けて本格論戦に入る。新内閣が発足後、国会審議が実質2カ月にわたって休眠していた事態は異常だ。首相と各閣僚の資質が試されるだけではない。衆院過半数割れの連立与党と、特定の少数野党による政策協議の新たな枠組みは開かれた熟議の国会をゆがめず、健全に機能するのか、先行きも見極めねばならない。 一般会計補正予算案は、経済対策を柱に13兆9千億円超に達する。歳出構造を平時に戻す経済財政運営の骨太方針は、政局も絡んで空文化し、国債依存度は高まる一方だ。 国民民主党は今回、与党との政策協議を経て補正予算案に賛成する流れにある。手取りを増やす年収103万円の壁引き上げの見返りに、予算案の中身や財源に無批判ならば、数の論理で予算案を通過させた旧来政治と変わらない。予算審議には責任を持って臨むべきだ。石破政権は過半数割れした自省の下、他の野党との議論にも真摯[しんし]に応じる必要がある。
年収の壁を巡っては、地方税収が大幅に減る事態への懸念が県内をはじめ全国の自治体に広がっている。物価高や人手不足などへの対応は急務だが、年収の壁引き上げに伴う税制が持続可能かどうかも重要だ。税制改正大綱は、従来の政府・与党、あるいは一部野党の公約のみを取り込むだけで策定されていいのか。将来世代への責任を重視し、与野党間で広く議論を尽くすべきではないか。 立憲民主党は、議席を大幅に伸ばしながらも、国民民主党への高まる注目度の陰で埋没感が指摘されている。それでも、野党第1党として、衆院予算委員長の強い職権を手にした重責を負う。国会変革へ、建設的な審議のかじ取りに注力すべきだ。 政治資金規正法の再改正は企業・団体献金が焦点となる。自民党は民主主義のコストとして、献金を含めた政治資金を正当化する。しかし、派閥の巨額の裏金問題を見れば、主張をすんなりとは受け入れ難い。そもそも、政党交付金の形で国民がコストを税負担している。にもかかわらず、何がなぜ足りないのかを精査して国民に理解を求め、生煮えの政治とカネ問題に今国会で決着を付けるよう重ねて求めたい。(五十嵐稔)