日本の戦争は「寝返り」が当たり前…将棋をさらにおもしろくした「持ち駒」という日本の独自ルール
■なぜ藤井聡太さんは「自由」と言ったのか こうやって整理してくると、将棋は、法的判断以上に窮屈で堅苦しい世界のように見えます。ところが、将棋が強い人たちは、そうは思っていないようです。 私は、朝日新聞の企画で、藤井聡太竜王・名人にインタビューさせてもらったことがあります。「子どもたちに将棋についてどんなことを伝えたいですか?」と伺ったところ、藤井さんは、「将棋は自由に指せるゲームなんだよ、と伝えたい」とおっしゃっていました。 これは、衝撃を受ける答えでした。将棋は全ての情報が完全に確定したところから始まるゲームですから、何を指しても枠の中という気もします。強くなるためには、守りを強くする形(囲い)を覚えたり、うまく攻められる手順を覚えたりと、たくさんの「型」を覚えなければいけません。「型」にはめられて、とても不自由な感じがします。 しかし、第一人者は「自由」だと理解している。 「固い枠があるのに、すごく自由」というのは、どういう意味なのか。本書で引き続き考えてみましょう。 ---------- 木村 草太(きむら・そうた) 東京都立大学大学院法学政治学研究科教授 1980年神奈川県生まれ。2003年東京大学法学部卒業、同大学法学政治学研究科助手を経て、現在、東京都立大学大学院法学政治学研究科教授。将棋ファンとしても知られ、2014年から東京都立大(当時は首都大学東京)にて法学系(法学部)特別講義「将棋で学ぶ法的思考・文書作成」を開講。将棋初心者の学生にも好評を博している。日本将棋連盟より三段免状を取得。著書に、『憲法』(東京大学出版会、2024年)、『憲法という希望』(講談社現代新書、2016年)、『自衛隊と憲法』(晶文社、2018年、増補版2022年)、『木村草太の憲法の新手4』(沖縄タイムス社、2023年)、『「差別」のしくみ』(朝日出版社、2023年)ほか多数。 ----------
東京都立大学大学院法学政治学研究科教授 木村 草太