大型補強巨人が抱える「なぜ若手が育たない」の矛盾はキャンプで解消可能か
プロ野球のキャンプインが目前に迫った。注目は、FAで陽岱鋼(日本ハム)、山口俊(横浜DeNA)、森福允彦(ソフトバンク)の3人を獲得、新外国人としても、ブルペン強化でマリナーズのアルキメデス・カミネロ、打線強化に元楽天のケーシー・マギーを補強した巨人だ。 優勝候補の筆頭だが、同時に大型補強が生え抜きの若手育成の芽をつむのではないかという危惧もある。 野手で言えば、坂本勇人(28)は2年目の2008年からレギュラー、長野久義(32)もルーキーイヤーの2010年から定位置を獲得したが、次なる若手のバリバリのレギュラー野手は出てきていない。3年目となる大砲候補、岡本和真(20)や、昨春キャンプで注目を集めたドラ2の重信慎之介(23)も伸び悩んだ。 巨人は、3軍制を導入し生え抜き育成をチーム強化のテーマにしていて、今季は、ドラ1のセンス抜群の即戦力内野手、吉川尚輝(21)らに期待が集まるが、新しい戦力は出てくるのだろうか。そして、そもそもなぜ近年、巨人から若手が出てこないのか。 昨年まで代走のスペシャリストとして活躍した元巨人の鈴木尚広氏は、「巨人というチームは勝利という宿命を背負っています。若手を我慢して使うことが難しいので育成と優勝が両立しづらい環境に置かれています」という大前提を語った上で、「だからなおさら、ワンチャンスをいかにものにしていくか、そのための取り組み方をしているか、という部分が重要なんですが、そこに問題があります」と指摘した。 「今の若い選手は、野球の重みを知らないように思えるんです。ひとつひとつのプレーが雑に見える。それを感じない鈍感力も大切なのかもしれないが、勝負ごとには邪魔な部分でしょう。痛みを覚え、感じながら野球をやって欲しいんです」 鈴木氏が言う“痛み”とは危機感であり目的意識と準備の重要性をどれだけ感じているかという部分だ。 鈴木氏は、ナイター時には、試合開始前の7時間前にはドームに入り、ストイックなまでの入念な準備を重ねて試合に臨んだ。一時たりとも無駄にせず、38歳まで全力でプレーした鈴木氏は、ここ数年、立場上、後継者育成を心の片隅に置き、後輩から助言を求められると包み隠さず対応することを心掛けていた。 「彼らは『尚広さんだからできる』と思っているようだが、僕も何も若い頃からできたわけではないんです。試行錯誤の積み重ねでできるようになったわけで、『鈴木さんだからできたんだ』ではなく、『どうしてできるようになったのか』を聞いてくるべきなのに、その深いところまで聞いてくる選手がいなかった」