大型補強巨人が抱える「なぜ若手が育たない」の矛盾はキャンプで解消可能か
プロとしての姿勢に不満の残る若手の中でも、鈴木氏が、代走のスペシャリストの“後継者”として期待をかけるのは、早大からドラフト2位指名された2年目の重信だ。 「脈があるのは、重信です。頭がいいし、自分という軸を持っていて、ヒントを投げかけてあげれば、できる選手。彼に一番、期待している。まずは代走を足がかりに、スタメン、レギュラーを奪取して欲しい。その素材と可能性がある。彼が化けたら嬉しいしチームとしても面白くなる」 重信が、新代走のスペシャリストとして存在感を示せば、陽岱鋼の補強が、チームの底上げ、若手育成という、もうひとつの相乗効果を生むことにつながるのかもしれない。 鈴木氏は、巨人とは?の問いをこうまとめた。 「巨人の伝統とは、常に勝つことを求められ、そのための補強がなされ続けて、しかも代わりもいくらでもいるという緊張感がチームに存在することでしょう。振り返ってみれば、常に切羽詰った感というか、追い込まれているプレッシャーがあった。勝つことは当たり前。では、勝つために何をするかをみんなが考え、自分で動く。自分で動かないと結果が出ないし、結果を出し続けなければ使ってもらえない。僕は、それをモチベーションに変えていった。だから成長できた。それが巨人なんです」 つまるところ、勝利を宿命づけられた巨人は大型補強に走ったが、12球団で最もチーム内競争が厳しい球団だからこそ、なおさら若手にはそこを勝ち抜くための意思の強さが必要なのだろう。巨人が抱える「若手が育成できない」という矛盾を解消するには、鈴木氏の指摘する意識改革がポイントだし、それを教育するような仕組みや、人も必要になってくるのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)