事務所も「過度な取材・報道は厳に慎んで」と言ってるのに…。中山美穂さんの「近親者」に“突撃”するマスコミの病理
筆者はその背景に、情報が洪水のように押し寄せる時代の中で、「より過激なコンテンツ」を求めている層が一定数存在することがあると考えている。これは迷惑系YouTuberのターゲット層と重なる。 私人逮捕を見て「スカッとしたい」のも、遺族の涙を見て「同情したい」のも、感情ベースの動機だ。いずれも受け手は、情報をニュースではなく、エンタメに近いコンテンツとして消費している。 過激とまで言わずとも、「わかりやすい答え」を求める人は多い。ネットで簡単に情報を集められる時代だからこそ、データに基づく考察や、経験に基づく分析に、まどろっこしさを覚えて、一刻も早く結論を欲しがる。SNS上で「死因はヒートショックだ」と断定的に伝えた人々も、そうした文脈に位置づけられるだろう。
■マスコミを「さらなるマスゴミ化」へ導く人々 そして、これらの路線は一定程度の支持を集めている。新聞社が昨今、読者の感情を揺さぶろうとする「エモい記事」に傾斜しつつあるのも、同様の理由があると考えている。その際に掲げるのは、「メディアは受け手が求める情報を届けるのが使命だ」といった大義名分だ。 あらゆる考え方の人に「知る権利」は保障されている。しかし、情報アクセスの手法が倫理的でなかったり、編集と称した脚色が加えられていたりすれば、本来求められている情報との差異が生じる。そもそも、それは「知る」なのか。娯楽のための「楽しむ」になっていないか。
とはいえ現状では、このような「情報」を欲している層が、一定数いる。また、そこに向けた商売をする人々が存在する以上、メディアスクラムも迷惑系YouTuberも、残念ながら消えることはないだろう。 当然だが、センセーショナルな内容ではなく、ファクトに立脚した報道を求める人も相当数いる。おそらく本記事の読者も、安易に感情になびくのではなく、あらゆる情報を集めて、総合的判断を行える人々だと信じている。新聞等のメディアだけでなく、経済メディアの記事まで読む人というのは、積極的に情報を集めたうえで、自分なりの判断を下すことができる人だろうと推測できるからだ。
しかしながら、マスコミを「さらなるマスゴミ化」へ導く人々がいることは、決して忘れてはならない。今回の中山美穂さんの訃報は、その一端を垣間見るような事例だったと言えるだろう。
城戸 譲 :ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー