台湾現地ルポ・立法院占拠24時 第2回 立法院の熱気
「第一回・平和な占拠」から続く 立法院の入り口には、ひまわり色のメガホンを手にした案内役がいた。私が近づいていくと「どうぞ」とでもいうような笑顔で敷地の中へと案内してくれた。
敷地に入り、あたりを見回す。それほど広くはない。小学校の校庭くらいの大きさか。地べたに敷いたござの上に寝転がっている学生もいる。ここで寝泊まりをしているようだ。学生たちは友人とおしゃべりにふけったり、柱に寄りかかりながらスマートフォンを操作したりと、リラックスした様子で過ごしていた。なかには大学の課題とおぼしき英文を熱心に読み込んでいる学生までいた。 私はなにか狐につままれたような気分だった。立法院の雰囲気が、新聞の「国会占拠」という見出しのイメージとかけ離れていたからだ。 ただそれでも、立法院に入ってすぐ左側のテントには、赤十字のマークと「診療室」の文字があった。白衣姿の若者もいる。現地の学生に聞くと、このテントは病院だという。医学部の学生や「EMT(救急医療技術士)」の資格を持つ若者らが、24時間態勢でここに待機している。市内の病院とも提携し、救護体制は万全だ。病院にいた医大生は「擦り傷など負傷者のほか、連日の抗議活動で疲労が蓄積し、体調不良を訴える学生も少なくない」と話した。 立法院の見学者は誘導に従い、敷地内を一周できる。気がつくと、私は立法院の建物の前にきていた。建物のなかでは、学生らによる占拠が今この瞬間も続いている。だが、立法院の玄関口に立つ警官の表情はそれほど険しくない。警官のほかにも、警備の学生たちが6人ほどいた。近くにいた学生たちにカメラを向けると、4人で肩を組んでポーズをとってくれた。 私が取材に赴いた3月27日の前後、台北の気温は非常に高くなっていた。気温が28度ほどの日も多く、半袖姿の若者が多かった。私も取材で歩き回ると、すぐに汗ばんでしまう状態だった。後日、運動に参加する大学生・高岳棋(20)に聞くと「立法院にはクーラーが設置されておらず、建物内の気温は35度まで上がっていた」という。地方から運動に参加している学生は、台北市内にある大学寮の風呂を利用していたようだ。
取材を終え、立法院の外へ出る。夜もふけてきたにもかかわらず、立法院の周辺はさきほどと何も変わってはいなかった。見渡す限りの人──表情は総じて明るい。耳に入ってくる演説の声からは、人々の活力が伝わってくる。そこには、緊張や暴力といったものはなく、熱気とうごめきがただ存在していた。ふと見上げると、馬英九総統の似顔絵が視界に入ってきた──これは悪ノリだろう。 (文・写真 / 河野嘉誠)