東大名誉教授が教える「物価上昇」続く根本原因 よいインフレ・悪いインフレの決定的な違い
企業はコスト上昇分を販売価格へ転嫁しようとしますが、すぐに反映できるわけでもなく、値上げができたとしても需要が減ることで、利益が圧迫されやすくなります。企業の利益が上がらなければ、私たちの賃金が大きく上昇することもありません。それでも物価が上がっているために、生活品への支出金額が増加。私たちの生活の負担感が高まるのです。 ■深刻な事態を引き起こすスタグフレーション コスト・プッシュ・インフレが悪い方向へ進むと、より深刻なインフレ「スタグフレーション」を引き起こすことがあります。たくさんの会社が人件費を抑えるために雇用を抑えると社会全体の失業率が増加して、一国の経済が大きく停滞するため、最も避けるべき状況のひとつと言われています。
ここまで駆け足で3つのインフレについて解説してきました。2024年現在、日本でインフレが起きていますが、これは日本経済が活性化したことが原因とは言えないでしょう。 つまり、現時点ではよいインフレではありません。今後、大企業だけではなく、中小企業の賃金上昇が物価上昇率を上回って経済の好循環が生まれるかが焦点となっています。
井堀 利宏 :東京大学名誉教授