イニエスタ擁するヴィッセル神戸が新型コロナ時代のサッカー対策準備「降格がないため攻撃的サッカーが増える」
「日本に来てから新しいサッカー、新しいチーム、そして新しいチームメイトたちとの絡みのなかで自分も成長してきた実感がある。今シーズンは自分のベストのバージョンをお見せしたい」 2018年7月からプレーしてきた過程で、バルセロナ時代には経験したことのない泥沼の大型連敗やトップカテゴリーのリーグへの残留争いを強いられた。一転して昨シーズンの終盤から右肩上がりに転じた軌跡は元日の天皇杯制覇をへて、成長への手応えと未来への自信に変わったのだろう。 バルセロナから加入するときに託された、ヴィッセルを強くしてほしいというプロジェクトの真っ只中にいるワクワク感が、中断前のフル回転に反映されている。ただ、三木谷浩史会長をして「魔術師」と称賛させたイニエスタは、中断されていた間の5月11日に36歳になった。 週に2試合、水曜日と土曜日の連戦が続く再開後も、同じようにフル稼働していけばどうなるのか。イニエスタならずとも、故障のリスクと背中合わせになるのは避けられない。心肺機能や筋力の低下を感じている、とコロナからの復帰後に打ち明ける酒井も然り。5月中旬に再開されたブンデスリーガで数多くのけが人が出ていることも、再開を目指す他国のリーグ戦へ警鐘を鳴らしている。 選手たちを預かる監督としては勝利を目指しながら、チームを上手く回していく点でも手腕を問われる。すでに国際サッカー連盟が承認している今年限りの特例がJリーグでも採用されれば、現状の「3」から「5」に増える交代枠も駆使しながら、可能な限りアクシデントを回避していかなければいけない。 そうした狙いを込めて、指揮官は「特に若い選手たちには――」と鼓舞したのだろう。
中盤ならば中断前にも起用されている21歳の安井拓也や20歳の郷家友太となり、スペインやJ2への期限付き移籍から復帰した22歳の中坂勇哉、ブラジルで武者修行した20歳の佐々木大樹が対象となるだろう。 「今日はボールに馴染ませるというか、ちょっと楽しい感じの練習をしたが、明日からは選手たちのコンディショニングやフィジカルを極めていく計画を立てている。タイミングやどこと対戦するのかはまだ決めていないが、再開までにトレーニングマッチを2つはしたいと考えている」 フィンク監督は今後のプランをこう明かした。今シーズンのJ1で最も少ない27人の選手数は、補強よりも継続を望んだ指揮官の方針でもある。再開まで1カ月あまり。少数精鋭主義のもとで選ばれたチームをさらに底上げし、イニエスタら主軸にかかる負担を少しでも軽減する青写真を描きながら、8勝1分けと昨シーズンの終盤から続く無敗街道の先に待つ、さらに成長した姿を追い求めていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)