「8割近くが給与に不満」「過労死ライン超えの職場の割合は…」 消化器外科医激減で医療崩壊の懸念が
7~8割の勤務医がアルバイトと兼務
なぜ消化器外科医は、決して少なくない年収に満足していないのか。その理由を考える上で注目すべきは「アルバイト」の特殊事情である。 国内の病院では一部を除き副業が認められており、7~8割の勤務医がアルバイトと兼務している。医師向けアルバイト紹介サイトを見ると、問診・聴診だけで時給1万円以上などとうたうところもある。この場合、週3日で6~7時間ずつ働けば、アルバイトだけで年収1000万円を突破する計算である。 常勤で得られる給与が低いほど、アルバイト依存度は高くなる。この傾向が特に顕著なのが大学病院の医師たちだ。黒田医師によれば、大学病院の基本給は市中病院の半分程度だという。従って合間を利用して働かない限り、市中病院の医師らの平均年収(1500万円)を大幅に下回ってしまう。 24年5月6日付の朝日新聞デジタル「夜中に緊急手術しても『時給500円』大学病院医師の訴えに教授は」との記事では、東日本の大学病院に勤めていた30代の男性医師の月収が「額面23万円、手取り18万円」と紹介されている。この医師はアルバイトで月60万円を得ていたという。常勤の月収がバイト代の3分の1なのだ。 アルバイト自体は若手から中堅、教授はもちろん病院長クラスまで幅広く従事しているのが現状なのだが、特筆すべきは大学病院の場合、どの診療科も等し並に扱われる点だ。内科や外科、小児科に眼科、皮膚科から産婦人科に至るまで、所属する診療科にかかわらず医師の基本給は同じなのである。 つまりは、暇な診療科の医師ほどアルバイトに時間を割いて収入アップを目指しやすく、忙しい診療科の医師は安い基本給に苦労するはめになる。後者の筆頭が、消化器外科の医師というわけだ。
アルバイトもままならず
前出の黒田医師が語る。 「外科にもいろいろあり、緊急手術がほとんどなく、また術後の管理にさほど手がかからない科もあります。そういう科の医師は、朝方ちょっと患者さんの様子を見て、お変わりなければ平日の昼間でもアルバイトができる。それに対して私たち消化器外科では、昼夜を問わず患者さんの容態急変が発生します。アルバイトに充てられる時間も土日か、あるいは平日の18時から翌朝7時半といった『当直』勤務しか選択肢がないのです」 家族と過ごす時間は言うに及ばず、日々の睡眠時間も犠牲にしながらバイトに励むことで、大学病院所属の消化器外科医らは、ようやく先に述べた水準にまで年収を押し上げてきたのである。 医師の働き方改革は、消化器外科医に健康をもたらす一方で、アルバイトの時間を奪っていく。常勤先での時間外労働だけでも上限を守るのは難しいからだ。最悪の場合、結果として年収の半分以上を失うことになる。 「以前ならば、医師がお金の話をするのははばかられる雰囲気がありました。でも今の若い人たちはしっかりしています。研修医の先生から『消化器外科も他の科と給料が一緒なのですか』と尋ねられることがよくあります」(同)