【オートレース】“残念”な1年を超えて。浅倉樹良の2025年が始まる~伊勢崎G1シルクカップ
◆第48回シルクカップ(G1、9日開幕、伊勢崎オートレース場) デビュー13連勝の新記録を打ち立てた。過酷な20メートル前ハンデにも耐久している。グレードレースでも見せ場以上のシーンを連発した。おそらく2024年最優秀新人賞は、彼の手に渡ることだろう。 でも…。普通のルーキーだったら、これ以上ない1年と評価されることだろうが、普通じゃない浅倉樹良には、もっともっと大きな期待と夢をどうしても抱いてしまう。なぜなら、彼は以前に類を探せない規格外の怪物ルーキーなのだから。 昨年1月25日。伊勢崎所属37期生としてデビューして、約1年の時が流れた。浅倉は自身のルーキーイヤーをどう思い、どう捉え、どう評価しているのだろう。 「いやあ、甘くなかったっす(苦笑)。デビュー前は常識を変えます! と言っていた? はい、そうなんですけれどね、自分もその気マンマンだったし、もっとやれるんじゃないかと思っていました。 でも、これだけ厳しい世界だということがこの1年でよ~くわかりましたよ! 思い通りにならなかったことが本当に多かったですし、(いいパフォーマンスを見せる)その立ち位置にすら行けなかったことは、もう、なんていうんですかね、ザンネ~ンでしたあ(苦笑いのピークに達する)」 個人的には、浅倉にはあまりにも多くのことを期待しまくって、デビュー1年目をガン見し続けてきた。この男なら2級車で最重ハンデに到達してくれるんじゃないか。彼ならかつて見たこともないような未知なるワンダーな世界をチラ見させてくれるんじゃないかと、そこにはもう期待しかなかった。 浅倉は自身のデビュー1年目の感想を伝えた最後の締めフレーズを「ザンネ~ン」で結んだ。これだけ活躍して、なお「残念でした」と放てるところが、やっぱりモンスター新人のすごいところなんだろうなと。周囲も本人も見据える先は、きっと違う。だから「残念」な1年という感想になったのかもしれない。 そして、年が明けて2年目のシーズンをここシルクカップから開始する。プロの世界を肌で感じた時間を有効活用するために、スーパーJの2025年はある。 「僕は周りのいい期待にも、そうでない期待にも、全部を“期待外れ”にさせちゃうんですかね。 でも、大丈夫! 今年は大丈夫ですって! もう、何とかしますから! いいところを見せますから! 今節も2回はいいところを見せて、周りにいい印象を持ってもらえるように頑張ります。2回じゃあ少ない? う~っ、厳しいこと言わないでくださいよお~(苦笑)。まあ、まずはそんなぐらいからやってみます」 初年の「常識を覆します」発言は、何の根拠も経験もないまま、ただ自身のポップなキャラがそう口にして、周囲の注目を絶妙に集めた。でも、2年目は違う。「今年は大丈夫です」と宣言するには、確かな根拠と1年を耐久して自身の英知で得た経験値がある。「去年1年で結構エンジンについて学ぶことができたことは本当に大きかったです。それはグループのみなさんのお陰っす! そこに自分のキャラ(すぐにウケを欲しがる性格)がうまくミックスできれば、速くて、強くて、面白いヤツという選手になれると思うんです。今年はあわよくばそこを狙って行きたいです!」 そうそう、それでこそ浅倉だ。ジュランだ。スーパーJだ。メガネのバケモノだ。ただ速い選手になれる人材は他にいる。ただキャラが立って面白い選手だって他に探せる。でも、その両方をドッキングさせた新時代の新規格のスターは、浅倉樹良にしか託せない。期待できない。 また1年後。「残念でしたあ」という彼の言葉を聞きたい。我々の想像よりもはるかに強く、イメージよりも圧倒的に速く、常識を超えた速くて、強くて、面白いヤツがまさか誕生しているなんて、全く想定できなかったことを「ザンネンでしたあ~」とドヤ顔で笑って欲しいです。 (淡路 哲雄)
報知新聞社