カルトかハーレムか「イエスの方舟」の"真実"描いたドキュメンタリー映画公開 若き監督が"方舟の地元"で語る
■「イエスの方舟」騒動とは 「イエスの方舟」は、聖書を読む勉強会の名前です。代表は千石剛賢さんで、1923年兵庫県生まれですから、今お元気であれば101歳ということになります。「おっちゃん」と呼ばれていました。1960年に大阪から上京し、キリスト教の「集会」を始めていきます。これが「イエスの方舟」の起源です。次第に、家庭を捨てて共同生活を始めていきます。1978年に、女性メンバーの家族から「娘が奪われた」と訴え騒ぎになって、方舟は姿を消しました。1980年、雑誌に親が訴えを載せて、大騒ぎになります。衆議院予算委員会でも「狂信的団体」として取り上げられますが、結局名誉毀損や暴力行為は不起訴となります。どうしてこの問題を若い佐井監督が取り上げようとしたのか、聞いてみました。 佐井大紀監督:「イエスの方舟」はどういうものなのかという定義付けを、あまりに今まで日本人はしてこなかった。どういう人たちで、どういうことを思って生きていて、というところまですくい上げようとする人はあまりいなかったと思うんです。そこを逆に今、時間が経って訪ねていった時に、何かを信じて生きることの本質が、それは同時に「旧統一教会みたいなものがどうしてあれだけのことをできてしまうのか」というところも裏返しとして分かるんじゃないかな、と思ったんですね。それで訪ねていったという経緯だったんです。 佐井大紀監督:「イエスの方舟ってこういうものなんだ」って断言する。僕は「それではないな」と思ったんです。「僕からは、方舟の皆さんのことがこう見えている」「これは、僕が皆さんと過ごした時間のものである」という形にするのが一番誠実というか、正しいなと思ったんです。映画として何かストンと落とすためには多分「本当はおっちゃんはこんな人だったんだ」という真相とか、情報が欲しくなってしまうと思うんですよ。種明かしがあるような、何かスカッとするような「落ちるもの」…。 佐井大紀監督:「イエスの方舟」の皆さんの営みや生活にはいろいろな見方があって、メディアの報道のあり方や、当時の日本社会の「本当の家族って何だろう」という問題、「女性の生き方」ということも多分あると思うし、ものすごく多面的なものを「これはこうだ」と言おうとすると、うまくいかないと思うんですね。今まで形にならなかったのは多分そこなんじゃないかなと、僕は撮った後にいろんな感想をいただきながら「多分イエスの方舟って、そういうものなんだな」と思ったんです。