カルトかハーレムか「イエスの方舟」の"真実"描いたドキュメンタリー映画公開 若き監督が"方舟の地元"で語る
■ドラマを制作している30歳の若い監督 佐井大紀さんは、TBSドラマ『EyeLoveYou』(2024年)などを制作しています。そのかたわら、ドキュメンタリー映画『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』や、『カリスマ~国葬・拳銃・宗教~』を作っていて、今回が3本目です。私も田村先生から『方舟にのって』の感想を聞かれたので、こう答えました。 神戸:この時期に佐井君が出てきたということが、この映画が生まれる一番大きなきっかけになっていることは間違いないです。映画を見ても、監督自らが出てきていて、取材先との距離感が非常に近いことがありありと出ています。こういった取材姿勢を取れるかどうかが、今回のこの映画が成立する一番大きな原因になっていると思うのです。だから、ある程度の時期が必要だったろうと思うし、逆に言うとあれだけ騒がれた当時の千石イエス事件、方舟事件と言われたことを知らない世代が直接飛び込んできたという形が、映画の成立する一番の要因になっているんじゃないかという気がしています。 神戸:映画の中身は、女性の登場人物一人一人の言葉が、とても腑に落ちる素直な言葉が多くて、そこに引き込まれていく感じがありました。何か、とても素敵なんですね。編集センスは、今の世代の作り方になっている。過去の映像を改めて取り上げる、というふうには収まっていないわけです。そういう意味で、佐井君という一人の制作者、映画創造者がいたということが、この映画の一番の面白みになっていて、そして女性たちの魅力を引き出しているという感想を持ちました。 知らないことを描くのは、やはり怖いですよね。「まだ生まれてないじゃないか」と言われるかもしれませんが「シェークスピアの演劇をライブで見た人は今いない」と田村先生は話していました。佐井さんはドラマを作ってきて、いろいろな幅があり、編集にもものすごく手法を持っているので、ドキュメンタリー映画としてある意味異質なものが生まれてきたのかな、と思います。