結婚しなくても貫かれた「愛のかたち」。人生が「生まれ」で決まる平安時代、変わらず想い続けられた理由【NHK大河『光る君へ』#34】
平安の女たち、平安の男たちを描いた、大河ドラマ『光る君へ』の第34話が9月8日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。 【画像】NHK大河『光る君へ』#34
時の流れとともに変わるものと変わらないもの
道長(柄本佑)がまひろ(吉高由里子)に物語創作の感謝を込めて贈った扇は、本作をうごかす重要な鍵になると予感できます。 扇にはまひろと道長が幼い頃の姿とふたりが出会うきっかけになった鳥が描かれています。扇を見たまひろは道長が自分に変わらず注ぐ愛、そして左大臣になった今も当時を心に留めていたことを感じ取り、感極まっていました。 かつて、道長は鳥が逃げて嘆くまひろに対し、「鳥は鳥籠で飼うのが間違いだ」と正論を言い放ちました。この台詞には道長ののびのびとした性格や生きものに対する考え方があらわれています。とはいえ、気落ちしているまひろへのフォローを忘れないやさしさをもちあわせており、足で字を書いて笑わせようとするおちゃめな一面もありました。 道長と出会った当初のまひろは「帝の血を引く姫」と出自を偽っていましたが、少女時代から"創造と想像の翼"をはためかせていたのでしょう。 幼い頃は野を駆けまわり、お互いの出自など意識しない関係にあったふたりですが、ふたりを取り巻く状況は時とともに少しずつ変化していきます。 大人になったまひろは「道長様」「左大臣様」と道長を呼び、彼が宮中で自分の前を通る際は他の女房同様に頭を下げることを忘れません。また、幼い頃は自分に正直で、頑固なあまり生きにくそうな一面もありましたが、今では才能を発揮して、宮中で話題になるほどの物語作家に。 一方、道長は少年時代はどこかぼけっとしており出世に興味がなく、自由奔放でしたが、左大臣として周囲から頼られ、自由とは無縁の日々を送っています。興福寺の僧・定澄(赤星昇一郎)からの脅しにも屈せず、頑固とした判断を下す道長の姿は頼もしかったですね。 時とともにさまざまなものが移ろいゆく中で、まひろも道長も社会の中で揉まれてきましたが、ふたりは出会った頃の面影を残し、心は変わっていないように思います。 また、ふたりの関係にさざ波が立つような事件もありましたが、お互いにとって相手が"最愛の人"であることは変わりません。まひろは道長と自分との間に社会的な地位の違いを意識してはいるものの、道長がまひろの尻に敷かれているように見えるのは筆者だけではないはずです。道長についてもまひろを誰よりも頼りにしているように見えます。