「お寺=おかたい場所」のイメージを変える。個性豊かなイベントで新しいお寺のかたちを追求する岐阜県〈東光寺〉
コロカルニュース
■岐阜県の郊外に位置する禅寺 「お寺」と聞いて、何が思い浮かびますか? 住んでいる地域にもよりますが、「法事をする場所」「お墓参りに、年に1~2回行く場所」、あるいは「通りすがりでよく見ているけど、どんなところかは知らない」など、あまり馴染みのないところだというイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。 【写真で見る】保護猫や保護猫活動の周知を目的としたイベント「東光寺ねこ日和」で販売された猫モチーフのお菓子。 しかしそうした状況に危機感を持ち、お寺を観光資源・文化財として残そうと、ユニークな取り組みを多々行っているお寺があります。岐阜県山県市にある〈東光寺〉です。 〈東光寺〉は約520年の歴史を持ち、敷地面積3000坪を誇る山県市最大の禅寺です。美しいドウダンツツジと苔庭でも知られ、最近は成人式や結婚式の前撮りスポットとしても人気を集めています。 ■「お寺=おかたい場所」のイメージを変える催しを実施 〈東光寺〉では、毎月さまざまなイベントを開催しています。 例えば、お寺が保有する文化財に親しんでもらう「月見茶会」。〈東光寺〉は長い歴史の中で数々の名僧を輩出したことから、お茶道具や伝統工芸品、美術品などが数多くあります。そうしたものに触れてもらおうと、数々の伝統工芸品を鑑賞しながらお茶も楽しめる会を開いています。 ほかにも、ユニークなイベントを随時開催中。保護猫や保護猫活動をしている人々のことを知ってもらうことを目的に、猫にまつわるクイズやスタンプラリー、マルシェを実施する「東光寺ねこ日和」に、地元の菓子店とコラボした和菓子づくりのワークショップなど、バラエティ豊かです。 また、地域の子供たち向けの体験教室「てらこやぁ」も行っています。 ■「人々が行き交うお寺」を目指して 〈東光寺〉でこうしたイベントが頻繁に開かれているのは、住職夫妻に「人々が行き交うお寺にしたい」という思いがあるためです。 住職の彦坂怜宗さんと妻・裕貴さんは、どちらも関西出身。6年ほど前に京都から山県市に移住し、〈東光寺〉を先代の住職から引き継ぎました。 しかし移住して驚いたのが、お寺に対する人々の関心の薄さでした。ふたりが住んでいた京都では、お寺はお出かけスポットの定番。怜宗さんが生まれ育った寺にはいつも檀家さんがいて、交流も日常茶飯事だったといいます。 ところが岐阜県ではお寺といえば法要をする場所というイメージしかなく、参拝者から「お寺にそこまで求めていない」とまで言われてしまったことも。「お寺は日本の文化の基盤をつくってきた場所なのに」と、衝撃を受けたそうです。 このままでは、魅力あるお寺がどんどんなくなっていってしまう――そう感じたことから、お寺のイメージを変える大切さを体感したといいます。 そこでまずは自分たちのお寺の固定観念をなくそうと考え、数々のイベントを主催。幅広い世代の人々がお寺に訪れる機会をつくっているのです。 過去に開催したイベントのなかには、来場者が700人を超えたものもありました。檀家さんから「こんなに人がいる〈東光寺〉は見たことがない!」と絶賛されたそう。 今ではイベントがない日でも若い人々が参拝に来る様子も見られ、徐々に手ごたえを感じはじめています。 「『月見茶会』や『東光寺ねこ日和』のようなイベントはある程度コンセプトを決めて、時間と手間をかけて取り組んでいます。ワークショップはSNSに出てくるカフェや和菓子などの投稿も参考に、『田舎のお寺に行ってでも体験したいことは何か?』という観点で企画しています。 正直かなり手探りなのと、広報担当の私自身もときめく内容であることを大切にしているので(笑)、結果的にいろいろな催しになっています」と、妻・裕貴さん。 一般の人々と同じ目線で内容を考えているからこそ、多くの人に喜ばれ、盛り上がりを見せているのかもしれません。