投球過程で“肘は下がって当然”? 小中学生も明快…「無理ない」投げ方の原理原則
野球指導者・長坂秀樹さんが提唱する“わかりやすい”適切な投げ方の伝授法
小・中学生に「投げ方」の原理原則を教えるのは容易なことではない。だからこそ、指導者には理解してもらうための工夫が求められる。Full-Countでは少年野球の現場をよく知る専門家に、“投動作”指導の注意点や練習法について取材。現役時代に身長168センチながら150キロ超の速球を投じ、現在は神奈川県藤沢市で野球塾「Perfect Pitch Swing」を運営する長坂秀樹さんに伝え方のコツを聞いた。 【動画】足首の柔軟性で投球パフォーマンス向上 長坂秀樹さん実演の「ヒヨコ」ストレッチ 長坂さんは小・中学生に「人間の動きに準じた、無理のない投げ方」を指導する。怪我のリスクを減らすその投げ方を習得するためには「運動生理学や解剖学は学ばないといけない」が、子どもたちには理解が難しい。そこで長坂さんが多用するのが“例え”だ。 「例えを増やすとわかりやすいし、興味を持ってくれる。この年代は重力や遠心力の仕組みがそもそもわからないので、『川はずっと流れているよね』『滝は上から落ちてくるよね』といった話から始めます」 例えば、指導者や保護者から「肘が下がっている」と指摘を受け、自然な投げ方を強引に修正して肩や肘を痛める選手は少なくない。「トップの時点で胸を張って肩甲骨が寄れば、肘が下がって当然。リリースの段階で下がっていると危ないけれど、胸を張って肩甲骨を寄せるから強い球が投げられる」。そう考える長坂さんは、小・中学生に伝える際は弓矢を引く動作やテニスのサーブ、バレーボールのアタックなどを例に出す。 その上でメジャーリーガーやプロ野球選手の投球写真を見せ、トップの時点で肘が下がっていることを確認させる。例えを用いて頭で理解させ、視覚にも訴えかけることで、子どもでも簡単に「ヒトの動きに準じた、無理のない投げ方」を身に付けられる。
「下手で投げて」できれいなオーバースローに…想像と実際との“ズレ”
一方、「頭で想像している動きと実際の動きにズレがある」のも小・中学生の特徴。長坂さんは教え子の投球動作を撮影し、動画を見せて“ズレ”を認識させる。 「だいぶ上から投げているから『サイドスローで投げてごらん』と言っても全然下がってこない。そこで『じゃあアンダースローで投げてごらん』と言うと、投げる前はアンダーの動きをするけど投げると綺麗なオーバースローになる。本人は『ソフトボールみたいな投げ方になった』と言いながら動画を見て、『え?』と驚くんです」 小・中学生の指導に難解な理論は不要。例えと視覚情報が上達の材料になる。それを少年野球の現場で実感してきた長坂さんは、12月16日から開催される「投球指導week」に出演予定。“投動作指導”に悩む指導者や保護者にアドバイスを送る。
川浪康太郎 / Kotaro Kawanami