暗躍、闇バイト “普通”の皮かぶり引きずり込む――元特殊詐欺主犯・フナイム氏が語る最新事情
【激動2024芸能・社会(7)】8月から首都圏の1都3県で連続強盗事件が相次いで発生し、世の中を震撼(しんかん)させた。少なくとも16事件で46人が逮捕。実行犯の大半は「闇バイト」だった。元特殊詐欺主犯で現在は犯罪撲滅活動家、「闇バイトで人生詰んだ。」(かざひの文庫)の著書があるフナイム氏(44)が、闇バイトの最新事情を語る。(特別取材班) フナイム氏が定期的にチェックしている、闇バイトの募集が投稿されるインターネットの掲示板には「すぐ働ける方、高収入案件あります」「いますぐお金を稼ぎたい方、仕事紹介します」などの言葉が並んでいる。「この前連絡したところは、ベトナムに行って詐欺電話をかける“かけ子”でした。月の固定給70万円でプラス歩合が20~30%。月に500万~1000万円稼ぐ人が多いと言ってましたけど」と振り返る。 首都圏連続強盗の“関係者”にも接触した。最近、闇バイトを紹介するリクルーターに電話で連絡したときの会話だ。 フナイム氏「“タタキ(強盗)”はどうですか?」 リクルーター「ありますけど…やらない方がいいですよ」 フナイム氏「いま捕まってる強盗とかですか?」 リクルーター「勧めませんが、つなぐことはできます」 フナイム氏「つながってるってことですか?」 リクルーター「はい。全然、知ってる人たちなんで」 フナイム氏は融資保証金詐欺、老人ホーム入居権に絡む詐欺などで35歳の時に逮捕。5年間服役し、40歳で出所。現在は特殊詐欺、闇バイトの情報を集めてSNSなどで啓発している。刑務所での呼称番号が「2716番」だったことから「フナイム」と名乗っている。「いまは巻き上げたお金を受け取る“受け子”“出し子”は捨て駒。秘匿性の高いアプリで連絡を取り合っているので、主犯格は足がつかないからです」と話す。 闇バイトの募集広告も変化しているという。アルバイトのサイト側も「高収入」「日給5万円」などの怪しい募集は削除するようになってきた。「入り口は普通のアルバイト広告。連絡すると“その仕事は埋まってしまいました。代わりのがあります”と別の仕事を紹介する。書類を受け取って運ぶと、実は封筒の中に入っていたのはお金だったり。張り込んでいた警官に逮捕される人も出ています」。普通のバイトのはずが、知らないうちに闇バイトに引きずり込まれているという。 防衛手段はあるのだろうか。「通常の履歴書以上の情報を要求されたら疑うこと。親やきょうだい、祖父母の連絡先や住所、身分証明書を持った写真など。あと、テレグラム、シグナルといった履歴が残らないメッセージアプリをダウンロードしてくれと言われたら、完全にアウトです」と語った。 闇バイトがタタキで狙うのは高齢者宅が多いが、その高齢者が加害者になるケースも増えている。警察庁は今月5日、闇バイト応募者らへの保護措置が約1カ月半で125件に上ったと公表。その約1割が50代以上だった。振り込み用の銀行口座や、かけ子用の携帯電話の回線を契約して譲り渡す“仕事”が多い。 闇バイトで特殊詐欺に関わると、末端の役割で初犯であっても、最近は実刑判決になることが多い。「刑務所で高齢者はイジメの対象になることが多いです。物覚えが悪かったり、団体行動のタイミングが遅れたりすると“なんだあのジジイ”となる。実際、僕もイジメを目にしましたが、悲惨な状況でした」。闇バイトには決して手を出してはいけない。フナイム氏は自らの体験から強く訴える。 ≪“金持ちの家リスト”出回っている≫首都圏連続強盗では500万円を超える現金が奪われた住宅もあった。詐欺集団は、なぜ大金がある家が分かるのか。「リストが出回っているからです。不動産購入者とか、高額商品の購入者とか。個人情報は(非合法の情報が集まる)ダークウェブに膨大にあります」。ダークウェブには、ある種のソフトをダウンロードすれば誰でもアクセスできるという。「詐欺電話をかけてお金を奪えなかったが、大金があることは確認できた家を集めて再リスト化することもある」と話した。