チームにおけるベテランの重要さ【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第143回
"ポスト青木"と目される川端選手に求められるのは、全体のバランサーとしての役割かもしれません。そういう役目は、チームがうまくいっている時には目立たないもの。特に若くて勢いのある選手にとっては、チームも自分も調子がいい時は、なかなか目に入りづらいものかもしれません。 しかし、チームの成績が下降した時に、その真価が発揮される。プロ野球において数字などには出てこない、別の才能なのだと思います。 川端選手は来年、ヤクルトの野手の最年長としてシーズンを迎えます。2015年の川端選手は首位打者を獲得しましたが、マイペースな性格で多くは語らないけど、人当たりがいいためみんなに愛され、常に多くの人に囲まれているイメージがありました。柔らかい雰囲気をまとっていて、どちらかというと言動よりもプレーで語る選手だったと記憶しています。 しかし近年は積極的に若手と食事に行ったり、リーダーシップを取ろうとしたりしている姿が見られます。ここ数年は代打での出場が多いですが、ベンチからチーム全体を俯瞰できるようになったのかもしれません。 MLBでは、数年前のパドレスのダルビッシュ有投手がそんな感じでした。野手は若手の有望選手が揃い、イケイケだったものの、勝てなかった。そんな時にそんな時に頼りになるのがダルビッシュ投手でした。 青木選手の背中を見てきた川端選手は来年、どんな姿を私たちに見せてくれるのでしょう。元西武の松坂大輔さんが言っていた言葉が頭をよぎります。 「いろんな経験をして、感じたから、いろんなことがあったから今の僕があるんだ」 どんな超一流選手でも必ず辿る道。それを川端選手もわかっているからこそ、チームを引っ張っていくことに意義を見出してくれるような気がする。いや、心からそう願っています。 "ポスト青木"という言い方をしてしまいましたが、川端選手にしかできない姿を若手に示し、"ポスト川端"を育ててほしい。そう思うのでした。 それではまた来週。 構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作