「令和の福袋」に見える必死な工夫、「まあ、こんなもんか…」で許されなくなった世の中の事情
● コンビニ大手3社に見る福袋模様 SNSを活用した広告効果はいかほどか 大手コンビニ3社の福袋を比較すると色々見えてくる。 まずセブン-イレブンは、レジ袋のデザインを模したトートバッグなどのオリジナルグッズ数点と、総額約3100円引きの電子クーポンのセットで3630円。 ファミリーマートは、ファミチキの袋を模したクッション&ブランケットなどのオリジナルグッズ数点と、総額約3100円引きのクーポン、そして0.1%の確率で1万円分のファミペイポイントが当選する内容で、3300円。 そしてローソンは少し毛色が違って、お菓子やカップ麺などの詰め合わせで1080円である(※12月5日現在、公式からのアナウンスは確認できず。例年の流れから1月1日から店頭で販売されると推測されている)。 これがどんな評価になったかというと、 ・セブン……穏やかに喜ばれる。 ・ファミマ……かなり喜ばれていそう。 ・ローソン……みんな大好き。 という印象である。 セブンは、現在コンビニ王者から陥落しつつある逆風の中にあるので、世評も辛めに出やすいという背景もあってか、「この福袋はいらないかな」といった声も聞かれた。しかし、日常使いできるグッズの数々は喜ばれもしていて、クーポンも含めれば当然お得なので、全体として評判はいい。
ファミマは好評で、すぐ完売したようである(在庫数を少なめにした戦略などもひょっとしたらあるかもしれない)。話題になったのはファミチキデザイングッズで、ユーモアあるデザインがウケたようである。オリジナルグッズは、やるなら思いっきりオシャレにするか思いっきり面白くするか、何かの方向に振り切った方が浮動ファンの支持を得られそうである。 ローソンは、ただのお菓子の詰め合わせなのだが、1080円という入手しやすい金額と、お得にお菓子が手に入るワクワク感が毎年楽しみにされている。スタイルとしては令和福袋でなく従来型福袋に則ったものであるが、日常的に見るお菓子の数々は総額が計算しやすく、すなわちお得感も肌で実感しやすい。昨今の物価高で生活が圧迫されている消費者からは、なおのこと喜ばれているようである。 ● 福袋が「まあ、こんなものか」で 許されなくなった背景 従来型福袋は、“販売元の在庫処分”と“消費者の「ワクワクを買う」”という点で利害が一致していた。この福袋は当たるも八卦当たらぬも八卦で、内容が体感的にハズレだったとしても消費者は、「色々入っていて総額では得しているし、まあこんなものか」とギリギリのところで自分を納得させることができた。 しかし、最近はSNSが盛んである。ちょっと不満を感じたらそれがすぐネットに発信されて多数にシェアされる。福袋の中身なんかは格好のトピックで「あそこの福袋は微妙らしい」とイメージが付いたらブランドにとって致命傷だから、アパレルブランドが出す従来型福袋の中身は今や結構しっかり充実しているし、いっそ運要素を極力排して中身をあけっぴろげにしてしまおう、というところで令和福袋が浸透してきたのである。 そして、どう考えてもお得な令和福袋を手にした消費者は、当然喜び、それをSNSで発信する。するとブランドのイメージが向上する。企業が場合によっては赤字覚悟で令和福袋を販売するのは、ある種の広告戦略でもあるわけである。 ただ、だいぶ場が煮詰まってきているので今後どうなっていくか。というのも、令和福袋は全体が“超お得”という雰囲気なので、少しせちがらさを感じさせる内容だと、すぐに消費者から不満が寄せられるのである。加熱するサービス競争の末にサ―ビスの質が低下してしまっては、企業と消費者双方にとって良くないので、お互いが喜んでいける幸せな福袋の運用が、ぜひとも目指されたいところである。
武藤弘樹