時間を浪費する“スマホ依存”から、私たちを救う【ドーパミン断食】とは?
“スマホいじり”をやめようと思っていたのに、あっという間にもうこんな時間に……。実はそれ、ドーパミンのせいかもしれません。脳科学者の恩蔵絢子先生にお聞きします! 【自律神経診断】 乱れるとプチ不調に!?現在の状態をチェックしよう! 教えてくれたのは…恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)さん 脳科学者
“スマホいじり”が止まらない原因は「ドーパミン報酬」?
気づけば、お風呂も食事も忘れてSNSやネットドラマを観ている。もうやめないと……と思った次の瞬間にはスマホを触っている。そんな行動に心当たりはないですか? 実はそれ、「ドーパミン」のせいかもしれません。 ドーパミンとは、「学びのサイクルづくり」に重要な、主に快楽を司る報酬系の神経伝達物質のことです。例えば、何かに挑戦して成功すると「嬉しさ」や「達成感」を感じて、「もっと頑張ろう」という気持ちになりますよね? これは成果に対して脳内にドーパミンが分泌され、「その行動をもっとしたくなる」よう働きかけるからです。 なぜそのような機能が備わっているかというと、私たちの祖先が狩猟採集をしていたことに関係しています。この頃は、獲物の捕獲の成否が生命の存続に直結しました。狩猟が成功するとドーパミンが達成感をもたらし、次回も成功するためにどうしたらいいか、学びの意欲を高めてくれるのです。現代においてもこの基本的な働きは変わりません。 つまり、ドーパミンは「苦労して成し遂げる」「必ず上手くいくとは限らない不確実なことに挑戦する」ことで、その効果を正しく活かすことができるのです。例えば、今の実力より少し上の学びに取り組む、苦手だと思って避けてきたことに挑戦する、などが該当します。そこで成功体験ができれば、ドーパミンは次なる行動を後押しする糧になってくれます。
悪い学びのサイクルに陥る「デジタル中毒」とは?
ドーパミンは本来「苦労して成し遂げたこと」に支払われる報酬のようなもの、とお伝えしました。ですが、最近では労なくしてドーパミンの報酬が払われ、それが依存や中毒、またはそれに近い状態を生み出していることが問題視されています。特に現代人の多くが危険性を孕んでいるのが「デジタル中毒」です。 ネット上には刺激的な情報が無限に溢れていますよね。映画やドラマの配信サイトに行けば話題作が山ほど並び、動画配信プラットフォームには、インフルエンサーが発信する動画が無数にアップされています。ネットに接続さえすれば、自分が何もしなくても「面白かった」「ためになった」というドーパミンからの報酬を得られることで、次から次へと刺激を求めてしまうのです。 やや難しい言い方になりますが、こうした「身体性を伴わない学び」は本来の「学び」とは言えません。脳は物事を少しずつしか学習できないため、ネットで気軽にたくさんの情報をインプットしても、「わかったつもり」になるだけなのです。もちろん、スマホやパソコン、インターネットは時空も身体性も超えられる素晴らしい技術です。その一方で、脳が報酬を「もっと! もっと!」と過剰要求しやすく、いたずらに時間を浪費し、身にならない「悪い学びのサイクル」に陥る可能性があることも覚えておきましょう。