首都の地下に存在する知られざる巨大トンネル -「環状七号線地下広域調節池」の工事現場を見学した
そしてエレベーターを降りた先に広がる地底巨大空間は、近未来を描いたSF映画のような世界だった。
見学隊は一列になり、細い作業員用通路を歩いてトンネルの奥へと進んでいく。 世界最大級という外径13.45メートルのシールドマシンで掘削された、円筒状のトンネルの内径は12.5メートル。
トンネル側面は、“合成セグメント”と呼ばれる1.8メートル幅のリング状の壁が連なっている。鋼材とコンクリートが一体となった合成セグメントは構造的に安定しており、あらゆる方向からの力に対して高い強度を保っているという。 調節池は通常のトンネルと違い、稼働時には内側から強烈な水圧がかかるので、壁面の強度は相当高くなければならないのだ。
合成セグメントが織りなすストライプ模様の壁面が、遠くの方まで延々と続くトンネルの光景は不思議な雰囲気で、異世界に迷い込んだような気分にさせられた。 ■機械の作動時に流れるメロディは意外な曲 トンネル起点部の壁には、シールドマシン発進式典の際に書かれた東京都議会議員等のサインがあり、「ふむふむ」と思いながら眺める。
少し進むと作業員さんが移動する際に使う自転車の置き場があった。5キロメートルを超えるトンネルの現場だから、ちょっとした移動にも自転車が便利なのだろう。
ちなみに、この広い地下現場で、同時に働いている作業員は20人ほどという。意外な少なさだが、あらゆる面で機械化・自動化が進んでいるので、作業する生身の人間の数は抑えられているのだろう。 さらに先へ進むと、向こうから資材を運搬する自動運転の台車がやって来た。一旦停止のゲートが作動するとき、聞き覚えのあるメロディが流れた。水戸黄門のテーマ曲『ああ人生に涙あり』である。
ほかにも見学中に見かけた機械類からは、注意喚起のためであろう、作動時にメロディが流れたが、『ルパン三世のテーマ』や、お約束の中島みゆき『地上の星』だったりして面白い。 いくら言葉を尽くしても足りぬほど、プロジェクトの壮大さを感じる現場だった。見学中はずっと、案内役の職員さんがていねいな解説をしてくれたが、僕は途中から目の前の光景に圧倒され、話を追いきれなくなっていた。