巨人の菅野智之が”虎ゼロ封”で30年ぶりに斎藤雅樹氏記録並ぶ開幕8連勝…あの辛口で知られる大物OBもあっぱれ
二死二塁から得点圏打率5割に近いサンズを打席に迎えた場面である。菅野は円熟の投球術で、この因縁のある新外国人を左右に揺さぶった。 初球はインサイドへ151キロのストレート。少し大城の構えるミットよりも甘く入ったボールだったが、球威があるからサンズは打ち損じた。ファウル。2球目は外へスライダー。3球目はインサイドに厳しいストレート。いずれもボールでカウントは2-1になったが、内、外と揺さぶられ、サンズは混乱していた。 4球目は外角へのスライダー。サンズはスイングしたが、わずかに芯を外してのライトフライである。執拗なインサイド攻撃で、やや踏み込みが浅くなったのである。 菅野は布石を打っていた。初回にも一死一塁からサンズをインサイドへのシュートで見逃しの三振にしとめ、4回の第二打席にも初球にインハイにシュートを投げ込んで体を起こしておいた。最後はアウトコースのストレートでスイングアウト。徹底したインサイドへの意識づけでスライダーへの踏み込みを躊躇させたのである。 「前回の甲子園のときにサンズには打たれてしまったので、きょうはしっかりと借りを返せたと思う」 4日の阪神戦ではサンズにスライダーを狙い打たれてレフトスタンドへ運ばれている。その苦い経験をこの日の配球に生かした。菅野のインテリジェンスである。 中5日登板で連敗をストップした。 今季は、過密日程の中、ほとんどの球団が、中6日登板でローテーを回していることを考えると異例ともいえる起用になるが、菅野は、「中5日くらいでヒーヒー言っていたら先発ピッチャーは務まらないと思うので大丈夫」と一笑に付した。 そして連敗ストップについては、「多少なりとも意識する部分はありますが、できることは限られている。明日からも連勝が続くと思う」と、頼もしく言いきった。 原監督も、「見事なピッチングだった。(今季の9試合で)一番良かったんじゃないでしょうか。緊張感のなかで力を発揮した。とくに後半につれて、点をとってから非常にいいピッチングをしてくれた」と絶賛した。 4回に岡本の先制アーチで均衡が破られてから菅野のギアが上がったが、原監督が指摘するように阪神の先発、高橋の好投が菅野にさらなる集中力を与えたのだろう。 これで9試合に投げてクオリティスタートを守れなかったのは、6回途中で降板して5失点した6月26日のヤクルト戦だけ。この試合は勝ち負けがつかずに連勝記録が続いている。勝っている8試合は、すべて2失点以下。防御率1.51の数字通り。2点以上取られないのだから、菅野一人で貯金「8」を作っているのも当然だろう。 まさにエースの名にふさわしい大活躍である。 原監督は、斎藤氏の記録に並んだことに関しては、「斎藤という投手も素晴らしかったし、菅野智之という投手もジャイアンツの中で名を残す投手になると思いますね」と最大級の賛辞を贈った。ちなみに斎藤氏は、30年前のそのシーズンに2年連続の20勝をマークしている。