TPP以外にも 日本が取り組む「メガFTA」にはどんなものがある?
日中韓FTA
日中韓FTAは、2003年から民間共同研究と産官学共同研究が行われ、2013年に交渉が始まりました。TPP交渉が開始されTPP主導で東アジアの貿易ルールが決まることに中国と韓国が焦りを抱いたことが理由となっています。 日中韓は東アジアの人口の7割、GDPの8割を占める巨大な経済圏です。日中韓の相互の経済関係は非常に重要で、日本にとり中国は輸出で2位、輸入で1位、韓国は同じく4位と5位(2014年)の貿易相手国です。日本の経済界は両国とのFTAを強く要望しています。両国とも鉱工業品の関税が日本に比べ高く、とくに日本の対中輸出の7割に関税がかけられています。日中韓FTAができれば大きな効果が期待できます。これによる日本の実質GDPへの効果は0.74%増と予測(川崎研一氏)されています。日中韓FTAは、物品の貿易をはじめ、サービス、投資など広範な分野を対象に交渉を行うとしています。交渉はすでに7回行われています。 韓国は、中国とのFTAを重視・優先しています。中韓FTAは2012年に交渉に合意、同年交渉が始まり、2014年の北京APEC時に実質的妥結を宣言し、2015年6月に署名しました。中韓FTAは包括的なFTAですが、自由化レベルはセンシティブ品目を例外としており、10年後の自由化率は中国が71.3%、韓国が79.2%と低いレベルです。日中韓FTAができないとRCEPもできません。このような低水準の自由化がRCEPの自由化交渉の足かせとなることが懸念されます。 RCEP、日EU・FTA、日中韓FTAは、すべてTPP交渉開始が引き金となり交渉が始まりました。TPPのインパクトの大きさを示すとともに3つのFTA交渉が相互に影響を与えあうことを意味しています。その意味でTPP交渉が合意できるかどうかがその他のメガFTA交渉にも大きく影響するでしょう。 ---------------- 石川幸一(いしかわ・こういち) 亜細亜大学アジア研究所教授。国際貿易投資研究所(ITI)客員研究員。ジェトロを経て2005年より現職。専門は、ASEANの経済統合、東アジアの経済統合。著書に「メガFTA時代の新通商戦略」共著、文眞堂、「ASEAN経済共同体と日本」共著、文眞堂など多数。