TPP以外にも 日本が取り組む「メガFTA」にはどんなものがある?
環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉の7月中の大筋合意が見送られたことで、日本が推進しようとしている他のメガFTA交渉への影響を懸念する声も出ています。メガFTAとは多国間の巨大な自由貿易協定のことで、世界中でTPPをはじめいくつもの交渉が進められていますが、日本が取り組むメガFTAには、TPPの他にどんなものがあるのでしょうか。
RCEP
RCEP(東アジア地域包括的経済連携)は、TPPと同様にFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を目指しているメガFTAです。RCEPは人口では世界の49%、GDPでは29%を占めています。RCEPはASEAN+6(日中韓印豪NZ)の16カ国で2015年末妥結を目指して2013年から交渉をしています。RCEPは2011年にASEANが提案しました。2010年に米国が主導するTPPの交渉が始まり、東アジアの広域FTA交渉で主導権を失うことをASEANが恐れたためです。 RCEPは中国が提案したASEAN+3(日中韓)FTAと日本が提案したASEAN+6(日中韓印豪NZ)FTAを統合したFTAです。RCEPは「既存のASEAN+1FTAを相当改善した自由化レベル」を目指すとしています。しかし、自由化レベルはTPPよりも相当低くなる見込みです。これは、インドが高いレベルの自由化に抵抗しているためです。対象分野は包括的であり、TPPの交渉分野と比較すると労働、環境、規制の調和などを除き、ほぼ同じですが、国有企業の規制などTPPのような新しいルールを決めることはありません。 RCEPが日本にとり重要なのは、中国、ASEAN、インドという新興の成長市場であるとともに世界の工場となっている国・地域が参加しているからです。日本の企業もこれらの国・地域に投資を行なっており、日本を含めてRCEP参加国の間でサプライチェーンを作っています。競争力の強化には効率的なサプライチェーンが必要であり、RCEPはそのための重要な手段になります。 2050年には世界のGDPの51%がアジアとなると予測(アジア開発銀行)されています。このアジアはRCEP参加国と重なります。21世紀半ばにはRCEPは世界最大の経済規模のメガFTAになる見込みであり、日本の将来にとりTPPに劣らない重要性を持っています。RCEPの実現により、日本の実質GDPは1.10%増えると予測(川崎研一氏)されています。